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特集

乾田直播と増収品種の導入で開拓する 稲作経営新時代

今年から始まる減反選択制で生産現場にはどのような変化が起き、その変化の波を農業経営者はどうとらえるべきなのか。変化の波に飲み込まれないため、あるいはその変化を追い風として利用するために、本誌は改めて水稲の乾田直播技術導入の必要性を訴える。今回の特集では、これまで本誌で繰り返し伝えてきた乾田直播の意義をいま一度見直し、その目的や最新動向を検証する。技術体系別に生産者を取材するうちに見えてきたのは、どのような播種機を選択するのではなく、いかに直播に適した土壌構造、土壌物理性をつくるかが成功の鍵を握っているということだった。また今回は、乾田直播の導入とあわせ、増収品種の導入によるコストダウンの可能性も探る。

減反選択制となった今、経営者として考えるべきこととは?

 減反の選択制が始まった。すべての経営者にその選択が得であるとはいえない。しかし、これによって顧客ニーズにあった品質のコメを思うがままに生産するという、生産者本来の姿を農業経営者が取り戻すことにお墨付きが与えられたといってもいい。これまでも減反に参加しないことに何の違法性もなかった。だが、多くの読者は経営上の損得よりも村内の合意が得られにくいことから、敢えて減反を選んできたという人も少なくないだろう。そんな人々はもとより、減反に参加しつつもこれからの時代に勝ち残っていくために、改めて直播栽培と主食用の多収品種への取り組みをお勧めしたい。

 直播に関しては読者の取り組みを紹介するが、特に今月号で紹介する経営者たちが、播種機の選択よりもその播種床作りの確かさを鍵としていることにご注目願いたい。そして、それが増収の理由であることを。

 “増収”がタブー視されてきたともいえる減反政策下の農業界であるが、本誌は増収こそが最大のコストダウンであり、それに取り組むのは農業経営者として当然のことだと考える。しかし、まだ増収を肥料の多投によって行なうことと思っている読者も少なくない。そうした方々は、本誌2009年12月号の特集「増収こそ稲作経営の王道」で紹介した新潟県の平野廣明氏をはじめ、土壌の管理レベルを上げることでそれを実現している経営者がいることを学んでいただきたい。

 また、今月号では民間育成品種の多収米「みつひかり」(三井化学アグロ(株))と、コシヒカリと同等の食味で1俵は増収し、しかも短稈品種で直播に向く「とねのめぐみ」(日本モンサント(株))の導入をお勧めしたい。

 みつひかりに関しては、種子価格が高く、産地が関東以南に限られ、コメの販売単価が安くなるという面はある。それでも、普通の人でも12~13俵は取れ、18俵を越す収量を上げている人もいる。そんな増収性とともに、業務用需要に対する契約生産がまだまだ必要であるという需要者側の条件は、今のコメ生産環境としては願ってもない条件である。関東では登熟に日数を要するため直播には向かないが、西南暖地で直播に挑戦する意義は十分にある。消費者に与えるイメージから、除草剤の使用が増える直播に取り組めないでいる農業経営者が多いが、そんな方こそ業務用の契約栽培という取引条件も含めて、直播による多収米生産に取り組む価値があるのではないだろうか。

 これらの2品種はどちらも関東以南での栽培が適地であるが、読者の中には「萌えみのり」などの直播用品種や在来品種を使っている方もいる。

 本誌は、生産規模の拡大と稲作コストの低減を目指すのであれば、乾田直播に取り組むべきだと考える。もちろん、従来の移植栽培や湛水直播を組み合わせるケースもあるだろう。だが、コメづくりをする先進国で移植技術に頼っているのは、わが国と韓国だけである。コメの販売条件に恵まれてきたために直播に取り組む経営努力をしてこなかっただけだ。韓国の経営者たちは日本人よりも積極的に直播に取り組んでいる。多収とコストダウンの両立を目指して、読者諸兄も乾田直播に挑戦してみてはいかがだろう。 (昆吉則)

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