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特集

稲直播栽培の技術的可能性と経営的問題点

 水管理は播種~苗立ち期の初期管理が最も重要で、湛水直播ではこの間に落水や湛水、深水や浅水、あるいは走り水とさまざまな制御が必要となる。これら水管理も直播方式と併せて検討されている。乾田直播では、苗立ち率を高めるための地下かん漑や排水性の確保が不可欠である。

 分げつ期を中心とした中期の水管理も、直播方式によりまちまちであるが、全体の傾向として、一定数以上の苗立ちが得られた場合、深水で茎の充実を図る管理が研究の主流となりつつある。

 病害虫防除については、イネミズソウムシやドロオイムシなど初期害虫の被害が移植以上に大きいので、要防除水準の見直しや有効な防除法についての研究が行われている。初期冠水ならびに散播栽培での過繁茂は、病害の発生要因となりやすいので、この点についても直播法別の注意事項の整理が必要であろう。

 このように、直播の栽培管理は移植以上の入念さを要求する。しかし、これを労力をかけて行っていたのでは、大規模栽培では直播の省力性はたちまち消し飛んでしまう。したがって、乗用型管理機やラジコンヘリ、トラクタ、自動水管理装置などを利用して作業の省力化を図る必要がある。

 研究面では、リモートセンシングによる生育・病害虫雑草把握法、それに基づいた必要部分のスポット防除法や、生育むら解消のための勾配施肥法などの開発を進めている。作物の生育状態や病虫害、雑草発生は人の目で見て判断するのが基本であるが、経営規模や圃場区画が大型化する中で、将来的にはセンシング技術の活用を必要とせざるを得ないだろう。


二段構えの直播品種開発

 最後になったが、直播の安定化と発展にとって品種開発は欠かすことができない重要な課題である。残念ながら、現行の品種、とくに良食味品種の中で直播栽培に適したものはほとんどないのが現状である。これは、これまでの我が国の品種改良が移植栽培を前提に進められ、育種の段階で直播適性についての選抜が行われてこなかったためである。

 現行の日本品種の多くは、直播で要求される低温発芽性や土中出芽性、初期伸長性、根の貫入・伸長性に欠けている。このため、播種法や初期管理に多大なプレッシャーがかかり、すでに述べたような精密な整地や水管理、播種法が必要となってしまう。もし品種改良によって、多少の不良条件下でも確実に苗立ちが確保できるような品種が育成されれば、直播栽培の安定性と省力・低コスト性は格段に高まるだろう。

 現在、外国稲などの持つ優秀な直播適性を日本品種に導入する研究が始まった。この研究による本格的な直播用品種が登場するにはまだ時間が必要であるが、同時に現有の良食味系統の中で少しでも直播適性のよいものを選抜して育成する、二段構えの方式も進められている。直播にも向く、「よりましな」良食味品種が登場するのは、そう遠いことではないだろう。


日本型直播の性格は技術集約型稲作である

 アジアの温帯モンスーン気候に属し、高温・多湿と冷涼な気候の同居する我が国にあって、直播栽培は気象条件のよい合衆国やオーストラリアと同じような技術であることはありえない。天候や雑草、病害虫から被害を防ぎ、高品質と多収を得る集約的な管理を、技術力によりいかに省力・低コストかつ精密に行えるかが、日本型直播の課題といってよいだろう。

 移植栽培の技術革新も、同じ延長線上にあると思われる。

 今回は直播について紹介したが、将来の日本稲作が、全面的に移植から直播に切り替わるとはとても考えられない。このことは、二毛作や冷害常襲地帯の稲作を考えても当然である。直播にはその本質的限界があり、日本稲作のすべてを直播に頼ることは困難であろう。

 すでに移植栽培でも、ロングマッ卜移植など省力技術の開発が始まり、三〇a苗無補給作業を実証するなど画期的な成果を出しつつある。これらの省力低コスト移植技術と直播技術が、ともに将来の技術集約型稲作の両輪を担い、地域と経営の条件に応じて普及していくものと期待している。

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