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特集

稲直播栽培の技術的可能性と経営的問題点

【[4]初期除草と水管理】

 安定した苗立ちとともに、直播成功のカギを握るものが初期除草である。以前は播種後三日以内にサンバードを散布していたが、最近ではプッシュを播種後一〇日、発芽ぞろい期に散布している。均平な代かきと、しっかりとした水管理をすれば、除草効果は高く安定している。

 播種後の作業で大事な作業は、水管理である。除草効果のほかに安定した苗立ちと生育を促進する役割が大きいからである。播種後七日くらいは、とくに浅水管理とする。これは、平方m当たり一〇〇本の均一な苗立ちを図り、平方m当たり四五〇本目標の有効茎確保の基礎づくりをするためである。

 播種後に黒ビニールの温水チューブで入水すると、水温上昇の効果は大きく、均一な苗立ちにつながる。その後の水管理は、田植え稲作と同じでよい。

【[5]肥培管理】

 コシヒヒカリで一〇a当たり元肥で窒素成分で二kgの全層施肥、追肥は二~三葉期に同二kg、穂肥同三kg、実肥同二kgを施用しており、田植機稲作に比べて元肥を少なめにしている。

【[6]鳥害防止】

 土中に播種するため、スズメの食害は皆無に近く問題はないが、鞘葉出芽期~二葉期にカモに食害されることがある。そうした鳥害が予想される場合、播種後に蛍光染色の水糸を田面五〇~一〇〇cmの高さに一〇m間隔で強く張ることで、かなりの効果があるし、排水口側(田面水が深いところ)は密にするのがコツといえる。病害虫の防除は田植機稲作と同じで、適期防除のみである。


強く求められる直播向き品種の育成

 直播一四年の体験をもとに、栽培ポイントをまとめてきた。湛水土壌中直播は、育苗が省力でき、大幅なコストダウンを図る技術である。そして、収穫期が一〇日遅れることから、作期分散ができ、コンバインや乾燥調製施設の過剰投資を抑えることも可能で、低コスト稲作として有望なことを実証できた。

 だが、ここ一〇年来、全体の二〇%を直播稲作で行ってきた私の経営からいえることは、昨年の冷夏や今年の高温多照などの異状気象が続くと、これまでに記してきた直播稲作を安定させるための条件の中で、どれか一つでも欠けることがあると、安定稲作につながらないというもろさをあらわにするのである。

 その大きい要因は、直播品種が皆無という問題にあるといえる。味と品質に重点をおいた品種の育成が続けられているが、それらはすべて、あくまでも田植機稲作を前提とした品種である。もちろん、味、品質はこれからの稲作に欠くことはできない。

 国際化が激化するなかで、生き残る道は、コスト低減であり、そのためにも、私白身の経営実践をとおして、実用性を実証してきた直播の安定稲作技術の確立に向けて、それに適する直播品種の育成に真剣な取り組みを望むところである。

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