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編集長インタビュー

米国農業の歴史から分かった、“人材教育”こそ強さの秘密

米国では、次世代の農業を担う子どもたちに様々な教育を提供している。農業のユースプログラム、農業高校における自主プロジェクト、さらには成人教育を担当する普及事業だ。特に普及事業については、普及指導員が大学から派遣されるという、日本とは異なるシステムになっている。米国の人材育成に着目し、『アメリカ農業を読む』という著書を上梓した斎藤潔 宇都宮大学農学部教授に話を聞いた。

専門外だから分かった米国農業の強さの秘密

昆吉則(本誌編集長) 今回はこの度『アメリカ農業を読む』(農林統計出版)という著作を上梓された斎藤先生にお話をおうかがいします。でも、先生は米国農業がご専門というわけではないんですよね。

斎藤潔(宇都宮大学農学部教授) ええ、私は日本国内における農業経営の企業化と法人化に関する研究をずっと行なってきたのですが、ここ10年間は米国農業の調査研究に携わる機会に恵まれました。アイオワ州立大学の客員教授として生の米国農業に触れたことがきっかけとなって、米国農業の強さの源泉が人材教育・育成にあるという点に着目しまして、この本をまとめました。専門外だからこそ、自由に書けた部分があると思います。

昆 私も、米国の農場を何度か視察に訪れています。その中で、あるストロベリーロードで働く日系人の家族に出会ったのですが、都会に出て行って会計士といったそれなりの職と地位を得ている息子が、農業にビジネスチャンスを見出して農業をやろうとしているという印象的な場面に遭遇しました。日本でもそういうことがないとは言いません。ですが、当時は日本では農村では後継者がいないとずっと言い続けられてきた時代だったものですから、米国人の若者というのはフロンティアスピリットにあふれているし、またこれが教育の違いなんだと思いました。

斎藤 米国は移民の国ですから、フロンティアスピリット、パイオニアスピリットという国民性があって、全部自分で作り上げるという精神が農村社会にもあります。背景には、貧しくて家族が暮らせない、だから未開の土地を開墾していかなければいけないという歴史的な側面もないわけではないです。でも、それが西部開拓につながってもいきました。
親子とはいえそれぞれに開墾していった農地で営農し、息子が父親の農場を引き継ぐ場合は相続ではなく、買うというのが一般的です。もし金銭面の条件に合わなければ、息子は買うことはしません。その辺はきわめてドライですよね。

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