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化学性の測定値に基づく施用量の割り出し方
今回解説するのは、土壌の性質を左右する残りの要素、土の化学性に関することです。ここまで解説した生物性と物理性には、測定方法やその値の有効性といった面で問題がありましたが、化学性の分析値とその値から計算上得られる改良資材の施用量は信頼して扱うことができます。
改良資材の中で最も使用頻度が高いのは、石灰(カルシウム)と苦土(マグネシウム)ですが、土壌に石灰と苦土を蓄える場合は、交換性石灰と交換性苦土という形態になります。交換性の成分には、土壌分析の対象になる主だったものとして石灰、苦土、カリ、ナトリウムがあり、このほかマンガンやアルミニウムなども交換性の成分です。今回は、特に石灰に限定して見ていきます。
石灰が交換性になるということは、マイナスの電気を帯びた土のコロイドに、石灰がプラスの電気を帯びてできたカルシウムイオンが、静電気的に吸着されるということです。
この関係は、丸いテーブルとその周りを囲む複数のイスをイメージすると分かりやすいかもしれません。テーブルにあたるのは土のコロイド、イスにあたるのはコロイドが持つマイナスの電気、そのイスに座るのは交換性カルシウムや交換性マグネシウムといったプラスイオンになります。
テーブル(土のコロイド)によってイスの数は異なりますが、これは土の化学分析を施肥設計に役立てる場合に最も重要になるところで、このイスの数を「塩基交換容量(CEC)」で表します。単位は“me(ミリグラム当量)”で、1meがイス一つにあたります。
また、この塩基交換容量のうちの何%を、そこに吸着されたカルシウムイオンが占めているのかを示すのが、カルシウム飽和度(石灰飽和度)です。一般的にはカルシウム飽和度50~70%程度が作物の生育にとって良いとされていますので、その飽和度にするために必要な石灰の施用量を実際に計算しながら求めていきたいと思います。
〈石灰施用量の割り出し方〉
ここでは仮に、対象とする土のカルシウム飽和度目標を50%、土に含まれる交換性カルシウムの実測値を140mg、土の塩基交換容量を20me(イスが20コ)としておきます。これは土壌化学分析で読者の皆さんがデータを受け取るときに目にする内容でもあるはずです。
(1)成分量の単位を塩基交換容量に変換
まず、土壌分析で測定される交換性カルシウムの値の単位は“mg”なので、この重量を示す単位を塩基交換容量“me”に変換して、イス1つに座るカルシウムイオンの量を割り出します。交換性カルシウム(CaO)は酸化物として計算されるので、その分子量は56mg(Ca:40+O:16=56mg)。交換性カルシウムは2価ですから、交換性カルシウムは28mg(分子量56mg/2=28mg)で1つのイスに座るということになります。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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