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【耕すということ】
南米の不耕起栽培から考えること
- 農学博士 村井信仁
- 第8回 1994年12月01日
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パラグアイで見た不耕起栽培
かねてから、南米では不耕起栽培が成功しているという噂を聞いていた。何故、わが国では難しいのに南米ではうまくいくのか不思議であった。今回パラグアイに立ち寄る機会があり、偶然その秘密が解けた。と同時に、この方法をいつまでも続けてよいのだろうか、という疑問も抱いた。
パラグアイの粘質土壌地帯では、大雨があると水蝕が激しく、表土の流失に危機感を覚え、何とかしなければならないと悩んでいたそうである。そんな折、ブラジルで不耕起栽培によって水蝕を防止している話を聞き及び、これを導入してみることになったという。
小麦と大豆の交互作である。当初は雑草処理に苦しむが、次第に雑草を抑制することにも成功し、その低コスト、省力性に見るべきものがあって、賛同者も多くなり、面積を増やしているとのことであった。
圃場に案内されて小麦畑に入ってみた。見事な生育である。不耕起栽培を始めて三年目だそうであるが、驚くほど雑草が少ない。前年の大豆の茎やカラもよく腐植している。収量も、耕起する普通栽培に比べて、それほど劣らない。場所によっては、むしろ増収さえしている。
こうなると、低コスト、省力性から、不耕起栽培に優れるものはないことになる。不耕起栽培に問題はないのか? 水蝕を防止できたとしても、土壌が硬化し、最初のうちはともかくとして、次第に作業が困難になり、収量が少なくなるようなことはないか? など、重ねて質問してみた。
土壌はむしろ軟化し、作業はしやすい方向に進んでいるという。表層に腐植層が形成され、保湿作用が見られること、根の伸びが良好で、排水性にも優れていると観察されているとのことであった。
五年ほど不耕起栽培をしている圃場に入ってみると、それほど腐植層が形成されているとは思えず、土壌も軟らかいとは感じられなかったが、これは日本の軽しょう土と比較するからであろう。熱帯の乾季の粘土は、固結してかなりひどい状態であるのかもしれない。
問題はといえば、連年相当量の除草剤を使用することから、それが長い間に何らかの問題をひき起こしはしないか、不安といえばそれだけであるとのことであった。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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