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【農水捏造 食料自給率向上の罠】
農水省、自給率向上政策のヒットに向けて“食料危機”をでっちあげ!?
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第18回 2010年03月01日
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今年4月に開始する、5年に1度の新たな食料・農業・農村基本計画の改定が大詰めを迎えている。計画の目玉は、自給率目標だ。これまで10人の民間識者が3年間、回数にして19回、農水省の企画部会で議論した挙句、結局は「自給率50%を目標にすべき」(農水省ホームページ)という民主党の既定路線で決まる可能性が濃厚だ。
自給率向上目標の害毒とその廃止を訴えてきた本連載の提言は退けられる形になりそうだ。しかし、改定までまだ1カ月残っている。諦める理由はない。世論を少しでも動かす最後の手段として、2月20日、本連載を単行本化した『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』を講談社から発行した(本記事を一般向けに加筆修正のうえ、未掲載の書き下ろし原稿も多数収録しています。ご関心のある方は、本誌63ページ参照)。
さて、向上目標を定める理由として、農水省は2つの根拠を掲げる。「国際的な食料危機の懸念」と「もはや経済力で自由に食料を輸入できる時代ではない」だ。今回は、一つ目の食料危機について反証する。
実際に世界的な食料危機が訪れる可能性は限りなくゼロだ。世界の穀物生産量の推移を見ればそれが杞憂であることが分かる。1961年の約9億tから2007年の24億tと、46年間で15億t以上増産している。単純に、それを07年の世界人口約67億人で割ると、人類1人当たり年間358kgにもなる。
これはどれほどの量か。日本人1人当たりのコメの消費量は年間約65kg、小麦は約40kgだ。これらを合計しても、年間100kgを少し上回るだけ。つまり、日本人が食べている3倍以上の量の穀物が毎年生産されていることになる。
24億tのうち、食用はわずか半分の12億tで、3割強がエサ用、バイオ燃料などの工業用が2割に迫る。この12億tで試算し直しても、1人当たり年間180kgとなり、日本人の年間消費量の2倍弱を生産していることが分かる。
自給率向上目標の害毒とその廃止を訴えてきた本連載の提言は退けられる形になりそうだ。しかし、改定までまだ1カ月残っている。諦める理由はない。世論を少しでも動かす最後の手段として、2月20日、本連載を単行本化した『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』を講談社から発行した(本記事を一般向けに加筆修正のうえ、未掲載の書き下ろし原稿も多数収録しています。ご関心のある方は、本誌63ページ参照)。
さて、向上目標を定める理由として、農水省は2つの根拠を掲げる。「国際的な食料危機の懸念」と「もはや経済力で自由に食料を輸入できる時代ではない」だ。今回は、一つ目の食料危機について反証する。
実際に世界的な食料危機が訪れる可能性は限りなくゼロだ。世界の穀物生産量の推移を見ればそれが杞憂であることが分かる。1961年の約9億tから2007年の24億tと、46年間で15億t以上増産している。単純に、それを07年の世界人口約67億人で割ると、人類1人当たり年間358kgにもなる。
これはどれほどの量か。日本人1人当たりのコメの消費量は年間約65kg、小麦は約40kgだ。これらを合計しても、年間100kgを少し上回るだけ。つまり、日本人が食べている3倍以上の量の穀物が毎年生産されていることになる。
24億tのうち、食用はわずか半分の12億tで、3割強がエサ用、バイオ燃料などの工業用が2割に迫る。この12億tで試算し直しても、1人当たり年間180kgとなり、日本人の年間消費量の2倍弱を生産していることが分かる。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
農水捏造 食料自給率向上の罠
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