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農水捏造 食料自給率向上の罠

農水省、自給率向上政策のヒットに向けて“食料危機”をでっちあげ!?


 「人の数は幾何級数的に増えるのに対して、耕作可能な土地の量は算術級数的に増えるのみである」と将来食料危機が来ると1789年に予想した「マルサスの仮説」は一度も証明されたことがない。

 冷静になって振り返れば、農水省が危機懸念の論拠としてあげる価格が高騰した07年と08年でさえも世界的に穀物は豊作であり、食料危機どころか増産に成功していた。投機筋の穀物相場への影響力も下がり、価格も下落・安定傾向にある。

ところが、日本における小麦の独占輸入機関である農水省は、この先10年の穀物価格は上昇を続けるという予測シミュレーションを、世界に向けて公式発表している(「穀物及び大豆の国際価格の見通し」)。
 売り手の輸出国や商社が「高くなる」とのシグナルを発するのなら戦略的に理解できる。ところが農水省はその逆で、買い手が売り手に対して10年間の価格高騰を容認する間抜けな情報発信をしているのだ。「5000本の方程式で計算」と自画自賛しているが、これは売り手の米国などにしたらチャンスだ。なぜなら、毎年前年より高騰を吹っかけても、日本政府は文句も言わずに買ってくれるだろうから。そして、食料不安と省益維持が合致する農水省は、むしろ「予測通りの高騰だった」とご満悦だろう。


バイオ燃料は米国農家のヒット作

 農水省は見通しの背景として、バイオ燃料の増産を挙げる。これまで食用と飼料用に生産されていた穀物をバイオ燃料として利用すると、食用と飼料用に回す分が減り、穀物不足を引き起こすという論法だ。

 しかし、今述べたように、全世界の穀物生産量は食用需要をはるかに上回っており、足りないどころか供給過剰に陥っているのだから、現状でもバイオ燃料に回す穀物は十分ある。09年末時点で、世界の穀物在庫は消費量の約20%に当たる4億5000万tもある。

 そもそもバイオ燃料用は、長年低価格に悩んできた穀物業界の新たな市場として、生産者や関連産業が値段を上げるために開発した新商品だ。事実、80~90年代にかけて、在庫量は消費量の30%前後という過多の状況が続いており、農家は採算割れに苦しんでいた。

 彼らとしても、これ以上、生産性をいくら向上させても、需要がなければビジネスにならない。供給過剰な穀物を売りさばくためにも、食用と飼料用、工業用に次ぐ新たなマーケットを作り出す必要があった。そこで、バイオ燃料に目を付けたのだ。

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