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特集

適期作業をこれで実現!複合作業機の魅力

耕起後の砕土・整地に、施肥や播種—。農業とはいくつもの作業工程をそれぞれの適期に行なうことの繰り返しでもある。しかし降水量の多い日本の農業は、“ままならない”お天道様の影響を受けやすい宿命を背負っている。限られた条件のもとで作業を完了させるため、各農機メーカーでは複数の工程を同時に行なう作業機が開発されてきたが、近年はトラクタの前後にインプルメントを装着する新体系も提案され始めた。複合作業機には時間の有効活用だけでなく、トラクタの踏圧低減や燃費の削減、機械台数やオペレーター確保からの解放というメリットもある。今回の特集では複合作業機の魅力を改めて見直すと同時に、日本の農業経営事情に即した次世代技術を紹介する。

一人で300ha作業を目指す


 北海道でも十勝地域では平均経営面積が約40haになっている。離農の増加や農家人口の減少を考えれば、農家一戸の平均経営規模が100haを超す時代はそう先のことではあるまい。農業経営は多様な形や規模があり得るが、世界の先進国の畑作の常識を考えれば、それは当然目指さざるを得ない経営規模だ。

 石山氏の経営面積は150ha。驚くべきことに石山氏は、その面積をたった一人の労働力でこなしている。作物は麦、ジャガイモ、大豆、小豆、ビートと一般的なものだ。育苗の手間の大きいビートは直播でこなす。石山氏を評して「収量が少ない」とか「雑草だらけで畑を荒らしている」などと、彼の取り組みの価値を理解できない農家は少なくない。でも、彼はそんな他人の評価をまったく気にしていない。明確な目標があるからだ。それは彼一人で300haの経営を実現すること。その上で、雇用を考え、作業の精密さも含めた石山氏ならではの畑作経営を実現しようと考えているのだ。

 北海道でもその程度のことが実現できなければ、世界に置いてきぼりにされてしまうと石山氏は考えている。それでもまだ、条件に恵まれた海外の経営面積には及びもつかないかもしれない。しかし、チャレンジもなく白旗をあげる日本農業の敗北主義に安住するのが嫌なのだ。

 作業効率を高めるために大型機械化を進める。一人作業であればこそトラクタや作業機の保有台数も多くなるし、大型化も進めてきた。機械購入は、ほとんどすべて海外に自ら出向き、中古のトラクタや作業機類を購入してくる。

 しかし、規模拡大を阻む最大の課題は、栽培期間に雨の多い日本の天候条件だ。プラウがけ、耕盤破砕、砕土、整地、施肥、播種—特に播種に至る春作業の過程で雨に降られることで、作業途中の畑に入れず作業が遅れてしまう。だから作業の複合化は大きな課題なのだ。

 このことは、晴れの日が続く欧米の畑作地域と比べると大きなハンデともいえる。欧米諸国でもトラクタの大型化に伴って作業の複合化は進んでいるが、彼らが考えるのは土壌の踏圧軽減と燃料節約が主目的である。しかも彼らの場合は同時に作業幅を広げることも可能なのだ。

 一方、雨の多い日本では、独自の作業の組み合わせや複合化の方法を考えざるを得なくなる。石山氏は雨の多かった昨年、スガノ農機(株)が開発中のトラクタ前後に装着する複合作業機をジャガイモ畑でテストした。その結果、多雨の中でも排水不良を起こすことなくよい作が得られたそうで、今後の経営に良いヒントをもらったと話していた。


作業の合理化目指し独自機械開発


 一方、柴田隆夫氏は赤シソ、キャベツの生産者。7.5haという赤シソの栽培面積は全国一だろう。そんな同氏が自ら開発したのが「赤シソ播種機」である。同氏の「乗用管理機用1畝4条赤シソ用うね立て・播種・マルチ複合作業機」は、単に複合化のレベルが高いだけでなく、赤シソ生産の合理化を目指す栽培者自身の開発であればこその細かな工夫が盛り込まれている。 同機は、井関農機(株)の乗用管理機に装着して使う。あらかじめ砕土整地された圃場を平うねにうね立てしながらアグリテクノ矢崎(株)のロール式播種ユニットを4条に並べた播種部で種子を播く。種子の乾燥を防ぐために、播種した種子の上にはトイレットペーパーを敷き、その上にマルチフィルムを敷設する。フィルムは縁の部分を土寄せして抑えるだけではない。フィルムのばたつきをなくすために条間に土を落としていく。カルチベータが跳ね上げる土をコンベアで機体後部に運び、マルチの上から条間に落とすのだ。

 マルチのフィルム切れの警報装置も付いている。フィルムが電気を通さないことを利用して、フィルムがなくなるとブザーで警報を出す装置だ。敷設するマルチフィルムにも苦労の跡がある。株間が3cmになるよう、自分でロール状のまま穴開け加工をする道具も作った。また、複合作業機にすることで作業機の重量が増し、乗用管理機の油圧揚力では足りなくなったため、外部油圧を取り付けて持ち上げ用のシャフトを追加している。

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