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木内博一の和のマネジメントと郷の精神

「上海・和郷園」構想

膨大な数に上る富裕層がいるといわれる中国市場。和郷園も上海を生産拠点とした本格的な中国進出を進めている。すでにグループ会社が香港に乗り込み、着々と足場づくりを固めているが、そこで行なっているのは、寿司店や日本食レストランへの鮮魚の流通だ。一見、農業経営とは無関係に思える取り組みには、中国で農業経営を成立させるために考え抜かれた戦略がある。

中国の富裕層マーケット

 本誌読者の会全国大会の基調講演で、高糖度トマトを皮きりに中国本土で生産事業に取り組む「上海・和郷園」構想の一端を明かした。

 予想どおり、「中国で商売して大丈夫でしょうか?」「本当に富裕層マーケットはあるのでしょうか?」といった質問が返ってきた。

 イメージ的には、日本と中国の商売はとても格差がありそうだが、実のところ、すでにそんなに大きな開きはない。

 たとえば、製造業で、日本では500円で作れる商品は現在、中国では450円ほどで作られている。その差はほんの1割だけ。利益はほぼ同じだ。原材料の価格も変わらなければ、使っている設備もそれほど変わらない。

 では日本と中国の何が違うのか。最も違うのは人件費の分配方法だ。日本の場合、500円の製品を作る中小企業の年間の人件費は、社員10人で大体の総額が5000万円。社長の取り分が800万円で、専務は600万円。課長クラスは450万円、若手社員は300万円……と若手社員と社長の差は3倍もない。それが中国の場合、450円の製品を作る企業の人件費は4500万円で、社長の取り分は3000万円だ。そして専務が300万円で、あとの社員は50万円。こうした分配だから日本よりもずっと富裕層が生まれやすい。

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