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編集長インタビュー

経営者は帝王学として子供を海外に送るべき

(社)国際農友会と(社)農業研修生派米協会。2つのプログラムが1988年に一緒になって、現在の(社)国際農業者交流協会に至る。これまで海外に派遣した研修生は約1万4000名。本誌読者にも、若き日にこの研修で農場や自分の未来のあるべき姿に開眼した経営者は多い。優れた人材を輩出してきた研修事業が今、新しい枠組みを考える必要に迫られている。

海外で学ぶのは技術より経営者マインド

昆吉則(本誌編集長) 戦後、日本は貧しく欧米は豊かという図式があり、農家は「現状より1000倍大きくなろう」と夢見た時代がありました。それが今、世界を見渡して日本ほど豊かな国はなく、後を継いだ今の世代は現状より5倍ぐらいの小さい夢を見て満足しています。そういう時代に、言葉の通じない海外に研修することはすごい価値があることだと思うんですよ。

伊藤友春( 国際農業者交流協会常務理事) ありがとうございます。

昆 まず協会の概要からうかがいたいのですが、どういう経緯で設立されたのでしょうか。

伊藤 1952年、農林水産省の監督する国際農友会が、妻帯者という条件つきで46都道府県から1名ずつを選抜して、米国に研修生を送ったのが始まりです。その後、現地の評判もいいので、規模を広げていくことになったんですね。
 一方で後継者以外の次男・三男をどうやって育てるかという問題もあり、米国でも人手が足りなかったことから、52年、外務省が中心になってカリフォルニアに短期移住する事業が開始されました。これは現地の農場で3年間働いた後、帰国して稼いだお金で別の事業を始めるのもいいし、そのまま海外に住んでもよかったのですが、法律的な問題もあって、66年には農業研修生派米協会へと発展します。このふたつのプログラムが88年に一緒になり、現在の国際農業者交流協会に至りました。これまでの参加人数は約1万4000名です。


昆 現在、派遣している国はどれぐらいですか。

伊藤 米国、デンマーク、ドイツ、スイス、オランダの5カ国です。基本は生産現場への派遣ですが、研修を受け入れてくれるのであればその他の業種にも送っています。海外で先生を担当する人は、農業を職業にして生活している人ですね。今までの農業教育は技術に特化していて、経営の専門家があまりいなかった。だから彼らの背中を見させてもらいながら勉強できることが特長です。

海外に物怖じしない感覚が備わる

昆 技術ではなく経営者マインドを学ぶわけですね。研修に参加する資格を教えてください。

伊藤 ヨーロッパは日本の農業大学校、大学の農学部、短大を卒業している必要がありますが、米国は特にありません。年齢は19歳から参加することが可能です。

昆 伊藤さんご自身も海外研修を経験されたんですよね。

伊藤 私は農家の子弟ではないのですが、「乳と蜜の流れる国」と呼ばれていたデンマークに憧れて、1978年から1年間行きました。行ってみると日本と比べて生活は質素でしたが、受け入れ農家の経営は安定しており、農業としての豊かさを感じました。自分が思っていた哲学のある農業を見た気がします。

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