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事業を継続する仕組みをつくる
システム化が欠かせないもうひとつの理由が、農業には一般企業のように、後輩が入ってくる仕組みがないことだ。そのため農業人口が増えない。これから10年間、誰も後輩が入ってこなければ、自然と、ある畑はすべて私が耕さなければならなくなる。それこそ60歳になれば、何万haにもなる。いま、農家の集まる会合に行けば60代の人が“若者”扱いだ。その“若者”たちもあと20年もすればいなくなる。そのような環境にいては誰でも、自分がその分の面積をやらなければならないという思考になる。世の中が求めている。私にできることは、時代を受け入れる準備をすることだ。仕組みとしてしっかりつくらなければ、途中で崩壊してしまうだろう。
仕事で損をするときには必ず理由がある。経営が甘かったり、費用が回収できなかったり。だが、うまく世の中の需要にのることができれば、間違って勝つことはある。ということは間違わないようにしておけば、負けることはないということだ。仕事を全うするための人を育てたり、育つ環境をつくる。つくってしまえば、会社は自然と大きくなる。
いま、私がつくったものを維持するだけでは、やがてそれは消えてなくなってしまう。しかし、組織として構築しておくことで引退しても続いていく。プラス、発展できるようにもしておかなければならない。ある意味さかうえは経営者育成の場でもある。今年は、これらのことを実証するために会社の規模をさらに拡大していこうと考えている。
仕事を平準化し周年雇用する
仕事を平準化することで雇用が安定し、周年雇用ができるようになる。平準化とは、作付け品目を増やすことで労働力の季節変動をなくすことであり、栽培技術を統一化することで、作業する人を選ばず、みなが対応できるようにすることだ。
さかうえの一年をざっと見てみると、作業上、一番人が必要なのは7~3月のケール栽培の間だ。4月にはサツマイモとデントコーンを植える。サツマイモは10ha程度、コーンは大型機械でやるため、そう人手はかからない。5~6月にはジャガイモの収穫、10人程度いればいい。作業のない、4~8月の期間はお茶農家に社員を派遣している。さかうえでは現在、その期間の作物を栽培する技術を習得中であり、社員は派遣先で栽培技術を学んで帰ってくる。仕事は、会合などで、「うちの社員使ってもらえませんか」と営業をかけて得た。派遣の許可を得て行なっており、派遣先からは、給与に必要経費のみをプラスした金額をもらっている。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
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