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行革問題については、省庁側の姿勢はいたって消極的。「政権基盤が強固なら避けられないが、村山政権の今後も分からないのに、行革に手を上げる役所なんてない。手を上げたところで政権が崩壊したら目も当てられない」。農水省のある職員は行革問題への役所側の本音をこう語っている。このため「食糧事務所の改革も形だけ整えればいい」という訳だ。
また、新食糧法をめぐる農水省と連立与党の調整の中で、社会党は一貫して「安全性調査の充実」を法案に明記するよう強硬に主張してきた。このため与党内でも議論を続けたが、結局、この要求自体が法律になじまないことなどから、新食糧法自体には明確に規定することを避けることとなった。
農水省は新食糧法の施行にともな農い、検査業務を徐々に農協など民間へ移行させたい考えを持っているが、こうしたことから機構改革の焦点である食糧事務所問題は一つの壁にぶち当たっているのが実情だ。食糧事務所職員の削減問題が進展しない代わりという訳ではないが、最近になって急浮上しているのが農業経済課の新設だ。
経営感覚に優れた農家を育成するため「農家経営に視点を置く」というのが、この新しい課の特色。農家の経営手法や経営状況を所管とする。現在の農水省は、大臣官房と経済局、構造改善局、農蚕園芸局、畜産局、食品流通局などに分かれているほか、食糧庁、林野庁、水産庁の三つの外局を持っている。各局の担務は、経済局が農林漁業税制、金融制度、農業共済などで、構造改善局が生産基盤や生活基盤の整備と農業の担い手の育成、農蚕園芸局はコメのほか麦などの畑作物、蚕糸、果実、花きなどの生産に関しての業務などに分かれている。コメを見れば、生産性の向上を図る圃場整備などが構造改善局、生産調整(減反)などが農蚕園芸局、流通が食糧庁の所管となる。
つまり、現在の農水省の機構は、所管が土地利用と作物別の産品に分かれているだけで、農家経営という視点が欠落しているといっても過言ではない。
農政審議会報告では「活力に満ちた農業構造・農業経営の実現」を果たすため「経営政策ともいえるような政策展開を強化することが基本」とうたっている。農水省のある幹部も「これからの大規模農家は、生産だけでなく加工、販売までも含めた経営を見据えるべき」とし、これまでの「コメを生産してればそれで終わりという農家では生き残りは難しい」と断言している。
さらに、来年四月には「農村漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」が施行する。同法は都市住民と農山漁村の人的交流を活発化させることを目的に、農林漁業体験民宿業の育成を推進する。都市住民のアウトドア志向、グリーンツーリズムの拡大などで、今後農家民宿の需要は格段と高まる見込みで、同法では公的な「全国農林漁業体験民宿業協会」を設立して、これまであいまいなままになっている体験型民宿を整備する方針だ。
農政新時代に伴い、大規模な経営体による加工、販売業への展開はいうまでもなく、こうした民宿経営や欧州で見られる自家作物を利用した農家のレストラン経営など、今後の農家経営がますます多様化することは必死。裏返せば多様化に乗り切れない農家は先細りになっていくことは避けられず、生産者は新時代に向けた発想の転換が不可欠となる。
農業経済課の新設は、こうした新時代に備え、土地利用、作物別管理型から農家経営管理型機構への改革の第一歩。農政審議会報告や新食糧法で従来型農家の転換を求めた農水省が、どこまで新しい農政を本気で展開することができるか、農業経済課の新設はその試金石になるともいえそうだ。
また、新食糧法をめぐる農水省と連立与党の調整の中で、社会党は一貫して「安全性調査の充実」を法案に明記するよう強硬に主張してきた。このため与党内でも議論を続けたが、結局、この要求自体が法律になじまないことなどから、新食糧法自体には明確に規定することを避けることとなった。
農水省は新食糧法の施行にともな農い、検査業務を徐々に農協など民間へ移行させたい考えを持っているが、こうしたことから機構改革の焦点である食糧事務所問題は一つの壁にぶち当たっているのが実情だ。食糧事務所職員の削減問題が進展しない代わりという訳ではないが、最近になって急浮上しているのが農業経済課の新設だ。
経営感覚に優れた農家を育成するため「農家経営に視点を置く」というのが、この新しい課の特色。農家の経営手法や経営状況を所管とする。現在の農水省は、大臣官房と経済局、構造改善局、農蚕園芸局、畜産局、食品流通局などに分かれているほか、食糧庁、林野庁、水産庁の三つの外局を持っている。各局の担務は、経済局が農林漁業税制、金融制度、農業共済などで、構造改善局が生産基盤や生活基盤の整備と農業の担い手の育成、農蚕園芸局はコメのほか麦などの畑作物、蚕糸、果実、花きなどの生産に関しての業務などに分かれている。コメを見れば、生産性の向上を図る圃場整備などが構造改善局、生産調整(減反)などが農蚕園芸局、流通が食糧庁の所管となる。
つまり、現在の農水省の機構は、所管が土地利用と作物別の産品に分かれているだけで、農家経営という視点が欠落しているといっても過言ではない。
農政審議会報告では「活力に満ちた農業構造・農業経営の実現」を果たすため「経営政策ともいえるような政策展開を強化することが基本」とうたっている。農水省のある幹部も「これからの大規模農家は、生産だけでなく加工、販売までも含めた経営を見据えるべき」とし、これまでの「コメを生産してればそれで終わりという農家では生き残りは難しい」と断言している。
さらに、来年四月には「農村漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」が施行する。同法は都市住民と農山漁村の人的交流を活発化させることを目的に、農林漁業体験民宿業の育成を推進する。都市住民のアウトドア志向、グリーンツーリズムの拡大などで、今後農家民宿の需要は格段と高まる見込みで、同法では公的な「全国農林漁業体験民宿業協会」を設立して、これまであいまいなままになっている体験型民宿を整備する方針だ。
農政新時代に伴い、大規模な経営体による加工、販売業への展開はいうまでもなく、こうした民宿経営や欧州で見られる自家作物を利用した農家のレストラン経営など、今後の農家経営がますます多様化することは必死。裏返せば多様化に乗り切れない農家は先細りになっていくことは避けられず、生産者は新時代に向けた発想の転換が不可欠となる。
農業経済課の新設は、こうした新時代に備え、土地利用、作物別管理型から農家経営管理型機構への改革の第一歩。農政審議会報告や新食糧法で従来型農家の転換を求めた農水省が、どこまで新しい農政を本気で展開することができるか、農業経済課の新設はその試金石になるともいえそうだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
農業経営者のための農水・JAウオッチング
時の政治状況を意識した行政、農業団体の公式見解と彼らの本音。建て前の言葉に振り回されない農業経営者のための農政展望として、一般紙経済部記者にメディアにのらない霞が関(農水省)大手町(JA)の陰の声を報告してもらう。
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