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その土壌を作った地形を知る重要性
例えばここに土壌分析の結果が、まったく同じ数値になった2種類の土があるとします。果たして、その2種類の土はまったく同じでしょうか。それは、同じかもしれませんし、違うかもしれません。結局その両者は、そこに作物を育ててみなければ、本当のことは分かりません。
土の化学分析値は、化学で分析できる極めて限定された範囲を明らかにはしますが、その範囲を外れた部分は知ることはできないのです。農業を実際に行っている人ならわかると思いますが、作物を育てるには「天の利」と「地の利」の巧みな組み合わせが必要で、最後の最後まで手の抜けない仕事です。
これは作物を取り巻く環境が複雑である証です。そんな複雑な仕組が想定されるのにもかかわらず、そのメカニズムをあまり知らないで多額の投資をするのは無謀でしょう。これは誰でも理解できることと思いますが、そのメカニズムを学ぶ機会が少ないことは問題です。
次に、土を調べる方法についてです。どのような土を調べる場合も、まずその現場に行くことが必要です。その畑や水田に実際に行くことなく分かることなど、数えるほどしかない、というのが私の持論です。その場所に行くことで、まず地形を知ることになります。地形は、そこに作られた土壌の生成要因を、最も強く影響させたものです。
自分の圃場の状態を多くの事例と比べる
地形から土を知るとらえ方は、どちらかというと水田で役立ちます。日本の水田は特別なつくり方をしています。無理して水を引き込んでも、稲を作らねばならない事情があったのです。
ですから畑として使う方がよいようなところに水を引いた水田は乾田タイプで、故意に水を引かなくてもよい条件のところは湿田タイプ、と説明すればわかりやすいと思います。土の化学分析以前に、もっと大事なことを教えてくれるのが地形ということが理解できるでしょう。
畑では扇状地や台地など、居住するにも飲み水の確保に苦労したところは、当然水はけがよいといえるでしょう。この地形に伴って、当然土壌断面調査が必要となることは、今さら説明を要するものでもありません。こうした土の調べ方が化学分析以外にもたくさんあり、その総合的な見方こそ最も重要なことといえるのです。
さて、そうした調査法によって、畑や水田を多面的に調べられるようになったとしても、まだ一つ課題があります。それはそのような手法によって、いかに多くの現場を知るかということです。これは述べることは簡単ですが、実際に実行しようとすると大変なことです。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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