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過剰の対策、欠乏の克服

土壌化学性の改良目標値


 かつて農家は自分の家から歩いていける、あるいは馬を使う程度の行動範囲しかなかった時代がありました。ところが意外にも、この現代においても、自分の田畑以外の圃場を調査する機会はないに等しいのです。自分の圃場の状態をたくさんの事例と比べることは、とても大切なことです。


石灰飽和度と土壌pHは連動しないこともある

 農業の研究は、大学や試験場で行なわれています。そこでは基本的に事例をできるだけ限定することで、結果を導き出しています。例えば1000カ所の稲に、同じ生理障害が発生したとします。するとその問題を試験場では限られた面積で、限られた株数や発生条件をつくって再現し、その発生メカニズムや対処法を考え出します。

 この手法はもちろん必要なことです。しかし、これは限定された環境内で発生することなので、現場ではもっと多くの発生初期の症状、中期から後期へと変化の様子を観察できると思うのです。欠乏症や過剰症の説明をする写真も専門書に載っていますが、それは一つの典型例でしかありません。もっともっと現場は複雑です。

 現場の実際と土壌分析値の扱い方について、多くの事例を知ることからその診断精度が向上していく具体例としては、石灰飽和度というものが重要です。この不足はカルシウム欠乏ということのみではなく、土のpHに直結した問題です。土のpHこそ現場の様々な要因で変動するものです。

 単純に考えてしまうと、石灰飽和度が何%であれば土のpHはいくつと、うまく連動するのではと考えられますが、実際にはそれがそうなる場合とならない場合があります。

また土のpHはこの石灰、あるいはマグネシウムの多少だけでなく変動することがあるのです。その原因は実は無機態チッソの動きにあります。
 無機態チッソにはアンモニア態と硝酸態チッソがあり、両者とも作物の栄養として大変に重要ですが、土のpH変動にも関わっています。露地畑の収穫跡地など硝酸態チッソは大変に少なくなって1~2mg/100gあたりが多いです。

 このぐらいであると土のpH低下には影響を示しませんが、5mgを越えると少しpHを下げる働きをします。当然もっと高い硝酸濃度になるとpHは下ります。このときEC値は1以上になっていくという関係です。逆にアンモニア態が増加して、3mg以上あたりからpHは上ることになります。

 この二つの要因が働いて、同じ畑の土でも分析値の中で土壌pHが異なってでてくるということが発生します。また泥炭土では強い有機酸を含む部分が上層部に偏在したり、地上に露出したりすることがあり、この部分のサンプリングによって低いpHになることがあります。

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