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視点

先入観がないことが強み


 果物価格が軒並み下落するなか、最後の砦と言われたイチゴも最盛期の半値近くになっている。しかし唯一無二の美味しいものを作っていれば、それも関係ない。

 例えば帝国ホテルでは、朝の2時間で当園の「とちおとめ」を使ったケーキを完売した。また地元の百貨店では、農協の共選品に比べて2倍の価格でありながら、当社のイチゴから先に売れていく。年末には1箱1万円のイチゴがお歳暮として売れている。当社のものを扱いはじめてから、イチゴ売り場の販売額が上がったと、取引先から嬉しい言葉を頂いている。


農家の画一性に驚く

 脱サラして新規就農した私が、たかだか10年間でベテラン農家以上に美味しいイチゴを栽培できるようになったのだから、農作物というのは美味しいものを差別化しやすい業界ではないだろうか。

 私は就農当初、大多数の農家があまりに画一的に農作物を作っていることに驚いた。イチゴ生産量では全国トップを誇る栃木県だから、イチゴ農家の数は多い。しかし、ほとんどの農家は、あまり土作りにもこだわらず、化学農薬で土壌消毒をし、近所の畜産農家から熟度の低い堆肥を持ってきて入れていたりする。

 美味しいイチゴを作るのは、水と土だ。当社では電解水、アミノ酸、植物活性酵素等を活用して、低農薬で栽培している。完熟で収穫しているにも関わらず、果肉がしっかりしている。甘さと酸味のバランスが良く、芳醇な香りが特徴だ。私には「イチゴ作りはこうだ」という先入観がないことが幸いした。もともと農家ではないから、食べる人の目線で何をどう作るかを考えることができた。

 また、多くの農家は「イチゴは土耕栽培が最高で、そのためには腰が痛くてもしょうがない」という固定観念を持っている。だから高設ベンチ方式というものがあると知っても、土耕のほうが味がいいなどと勝手に決めている。それでは土作りにこだわっているのかと思えば、一方で毎年土壌消毒を繰り返している。

 当社では最初から作業性を考えればベンチ方式しかないと決め、ベンチ方式で土耕の味を超えることを目標にしていた。創業時は資金難だったが、無理してハウス6棟のうち1棟だけベンチ方式にして実験を繰り返した。確かに当初はベンチ方式は、季節的に味が水っぽくなるのが問題だった。しかし栽培技術の改善を重ね、現在では土耕よりも食味が高く、収量も反当り5~6tを達成している。

 新規就農者の強みは固定観念にとらわれずに農業ができることだ。実際には農地取得や融資条件などハードルが高いのは確か。しかし、いいものを安定して作ることができれば、実はライバルは少ない。 (まとめ・長谷川竜生)

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