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ところが五輪終了と同時に、観光客の数は右肩下がりになる。そこに不況が重なり、失った観光客の数は70万人以上ともいわれる。津滝は、「白馬の農業は、白馬の観光資源のなかで生かさなければならない」と考える。もっともな話だろう。観光収入約350億に対して、農業は4億、わずか100分の1の規模しかない。白馬の特徴である観光資源をよすがにして生きるのが、この土地の農業のあり方だった。しかしそんな現実を目の前にしても、観光と農業のパッケージングで戦略を立てられる人間は少数派だった。
「農業」を核とした観光産業へ
観光パンフレットにも掲載されるブルーベリー農園は、白馬の売りのひとつだ。ところが年配者のなかから農園からの撤退を宣言する者が現れた。とりわけ夏場の摘み採りが、彼らの身体にはこたえた。行政としては、彼らの後を継いでくれる農業者が必要だった。
白馬村は春先が米の繁忙期、7月以降はソバの種を撒き始める。つまり春から夏にかけては、秋に向けての仕込みだけに時間が費やされる。7月から旬を迎えるブルーベリー栽培をそこに組み入れれば、夏場の現金収入が確保できる。ブルーベリー参入のメリットを津滝が説明する。
「国産のブルーベリーは希少さだけでなく、ビジネスとしておもしろいんですね。ほかの作物は農協などに出荷して換金しますが、ブルーベリーはここで育てて、入園料を払ったお客さんにここで摘み採ってもらいます。残ったものは冷凍化して、自分たちの発想でジャムやソース、ジュースを作ればいい。だから出荷をしないで、生産から加工、販売までを一手にできてしまう」
津滝は今後の展開としていわゆる「農業の6次化」に取組み、第一段階である生産から始まり、加工や販売、そしてサービスまでを連携させた経営を目指している。白馬村独特の観光マーケットを狙った農業、いやむしろ農業を核とした観光産業を創造したいと考えているのだ。
「子宝」の平均年齢は30歳
白馬山麓を薄化粧する季節外れの降雪を見て、スタッフたちが落ち着かない様子だ。農場を訪れる関係者たちが一様に驚くという、平均年齢30歳の若者たちである。雪山を愛する彼らは、雪解けとともに行き場を失う。総勢10人のうち半数が県外出身者で、なかには和歌山県出身の者もいる。津滝にとっては、彼らこそが農場の生命線となる存在である。
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津滝俊幸 ツタキトシユキ
(有)ティーエム(しろうま農場)
代表取締役社長
1958年、長野県白馬村生れ。52歳。県立白馬高校卒業後、地元の流通関連企業に勤務。リゾート開発のコンサルタント業などを経て、片手間に農業をしながら独立。その後、農作業受託に関わったのを契機に本格的に農業の道へ入る。04年に@ティーエムを立ち上げて法人化、09年からは「しろうま農場」を社名の前面に押し出す。冬場は前年の事業の数値化と翌年のプランを練る一方で、「わかた館」の経営にも携わる。http://www.tm-hakuba.com
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