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特集

人の行く裏に道あり花の山 マイナー作物で経営力を高める!

不景気による消費低迷、人口減によるマーケットの縮小……と、国内における事業経営は厳しい状況が続いている。高品質の果てなき追求や、熾烈な価格競争で体力を消耗する経営体が多い中、「人の行く裏に道あり花の山」の言葉があるように、ライバルのいないニッチなマーケットを創出し、ひとり勝ちするケースもないわけではない。マイナー作物――いわゆる「すき間市場」を満たす品目は、嗜好が多様化する現代だからこそ、存在価値が高まっているのではないだろうか。今回の特集では農業経営におけるマイナー作物に注目し、それらの導入が果たす意義や可能性を探る。他人と同じものを作るのではなく、独自の商品を生み出すことでニッチな需要を発掘する経営戦略のヒントをつかんでいただきたい。



競争をできる限り回避し価格決定権を持つ手段となるニッチ戦略とマイナー作物の導入

競争の激しいところで切磋琢磨する農業経営者もいれば、競争相手がいない市場で、半ば一人勝ちを望む農業経営者もいる。価値観は十人十色だが、相対的に競争するリスクを減らす戦略になりうるニッチ戦略とマイナー作物の導入、その意義をここでは考えてみたい。

■人と同じことをしないかそれとも、あえてするか

 「人の行く裏に道あり花の山」――。株式相場における格言である。大手事務機器メーカー、リコーの創業者である市村清の座右の銘とも言われている。面白いことに、江戸時代に米相場で大成功を収めた、酒田の本間様こと本間宗久も同様のことを述べている。「十人が十人片寄るときは決して(=必ず)その裏くるものなり」(宗久翁秘録より)。

 さらに、先日弊社で開催された『読者の会』セミナーの場で、本誌連載陣であるエコファーム・アサノ・浅野悦男氏もこんなことを言っていた。

 「何でみんなと同じの作ろうとするの? バカじゃないのって。だって競争するのって大変じゃん。だからオレは、種苗会社のカタログに載っている野菜はどっかの誰かが作るから絶対に作らないし、誰かが作るのを始めたって噂を聞くとやめちゃう。それに人と同じモノ作ったら面白くねぇじゃん!」

 人と違うことをすることで成功する、という意味のこの言葉は、相場だけに限らない。あらゆる事業経営において、そして人生においても当てはまるようだ。が、「言うは易し行なうは難し」である。大勢に順応すれば、危険は少ないし、事なかれ主義を通すことができる。気候条件や土壌条件を考えれば栽培が難しい農作物に手を出さないというのも、それぞれの経営判断であり、経営戦略といえるだろう。だが、それはあえて手を出さないのか。それとも“常識”や“因習”、ムラ社会への“配慮”から出せないというものなのか。


■達成したい目的を設定し資源配分をするのが戦略

 今月号では、農業経営戦略の検討材料として、市場性がない(もしくはなくなった)と勝手に思い込んでいたり、生産技術が難しい等の理由から敬遠されていたりする農作物=マイナー作物の可能性を紹介していこうと思う。ところで、先ほどあえて経営戦略という言葉を用いたが、その本質的な意味を確認したい。

 「目的を設定し、目的を達成するために資源配分の意志決定をすることが戦略の本来の意味。経営者にとっての目的は継続的に利益を最大化することであり、殆どの場合競争に勝たなくては利益が出ないのでいかに勝つかという競争戦略が主流になっている」と語るのは、池上重輔・早稲田大学大学院商学研究科准教授である。

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