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プロパーを育てる
私は、この連載のタイトルにあるように、“農業で幸せになる”と決心し、それを自分以外の多くの人の人生で実現できるよう“見える化”することにチャレンジしてきた。
そうこうしていると、「何を作ったら儲かりますか」「どうしたら農業でうまくやっていけますか」といった質問を農業外の人から受けたり、マスコミから取材で問われることが多くなってきた。
4~5年前までの私自身も同じように、どんな作物を栽培していくべきか、その中でどういう取り組みをするとうまくいくか、農業を単なる事業として捉えていた。しかし、ここ数年は企業として、どのように成長・発展していくべきか、そのためには何が必要なのか、という視点に思考の枠組みが変化してきた。
今の事業が何であれ、企業としてしっかりとした器ができれば、お客様や社会が求めるサービスや商品として提供することができる。その結果が事業になるという考え方だ。
これが変化した点だが、もうひとつ、初心からまったく変わらないことがある。前述の考えと矛盾するようだが、儲かろうが儲かるまいが一生農業をするという決意である。これは、農業に限らず、起業家があらゆる事業をするうえでもっとも大きな強みとなるのではないだろうか。農業に関心のある外部の人には、理論上、儲からない農業ビジネスには手が出せない。
決心した以上、私には世の中が求める農産物やサービスであれば、儲からないからだめだという先入観はない。経営という実践活動で、結果を出していくのみだ。たとえば、意識せずとも、他人より10倍働く、作業を合理化して10分の1にする、こうした実践の中に、後から振り返れば他人がイノベーションと呼ぶ、新たな経験知が生まれる。
このような知の蓄積は、全国の農場でいろいろな作物で生まれていることだろう。しかし、その経験知はある特定の作物で特定の農家に限定されており、外からは見えにくい。しかも、せっかく生まれた経験知が体系化されていないため、多くは農場内でも継承できない状況にある。だから、これまでの農家のやり方でそれをほかの作物に横展開することは難しい。農家生まれでさえそうだとすれば、非農家の出身者がやみくもに農業を始めても、ひとつの作物で平均農家のレベルに達することさえ、難しい。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
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