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江刺の稲

朝日「ニセ低農薬米報道」事件について

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第8回 1994年12月01日

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朝日新聞が一一月六日付け第二社会面に報じた「ニセ低農薬米」報道をご存知だろうか。この「告発報道」の対象になったのは岩手県の農業経営者I氏で、かねてから直接契約により低農薬米を消費者向けに販売しているほか、スーパー等との販売契約をしていることなどから、農協や食糧事務所との間で摩擦があった。一一月六日付けの朝日の記事は、「岩手県○○市の自由米(ヤミ米)生産販売業者が、通常の量の農薬を使い栽培した昨年産米を『低農薬栽培米』と偽って高値で販売していたことが、朝日新聞社の調べで分かった」というものであった。
 朝日新聞が一一月六日付け第二社会面に報じた「ニセ低農薬米」報道をご存知だろうか。この「告発報道」の対象になったのは岩手県の農業経営者I氏で、かねてから直接契約により低農薬米を消費者向けに販売しているほか、スーパー等との販売契約をしていることなどから、農協や食糧事務所との間で摩擦があった。

 一一月六日付けの朝日の記事は、

 「岩手県○○市の自由米(ヤミ米)生産販売業者が、通常の量の農薬を使い栽培した昨年産米を『低農薬栽培米』と偽って高値で販売していたことが、朝日新聞社の調べで分かった」

 というものであった。

 もっとも、その後、朝日自身の続報はおろか農業専門紙を含めて他紙はこの朝日の“スクープ”をまったく無視したことにこの記事への評価が示されている。

 ただ週間文春が一一月二四日号でその朝日新聞の報じた“スクープ”が「ニセ低農薬米」と報道するにはその記事は少し一方的に過ぎ、その報道によりI氏は契約者からのキャンセルが相つぎ大きな損害を受けただけでなく著しく信用を傷つけられている、として大新聞「朝日」の非を指摘する記事を掲載している。

 文春の取材によれば、(1)朝日新聞が取材したという農薬散布した米をI氏経由で売ってきたという人の取材は実際には行われておらず、いわばデッチあげであること。(2)朝日新聞は、I氏の袋には「イモチ病剤、オリゼメート等は使用せず」とうたってあるが、昨年度、I氏の水田には空中散布によりイモチ病剤が散布されており、にもかかわらず従来の米袋を使ったことを「告発」していること。(3)しかし、I氏は今まで「低農薬米」として表示している米には除草剤を一回使用するのみで、殺虫剤はまったく使用せず、イモチ病剤やオリゼメート剤などの殺菌剤も使用していない。その農薬使用量は地域標準の三八%という十分に「低農薬栽培」をうたい得るものであること。さらに、昨年度いわば「強制的に」イモチ病剤を含む空中散布が地域全体で行われたことを考えれば、大新聞による「ニセ低農薬米」という「告発」は、少しI氏には気の毒であること。むしろI氏らの抗議で今年度から空中散布は取り止めになった――とI氏に同情的である。

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