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農水捏造 食料自給率向上の罠

「世界の食料生産の増加は困難」(新食料・農業・農村基本計画)の大ハズレ!

世界の主要穀物生産国の今年の生産量予想によると、5月末の小麦在庫量は、2002年以来、最大値を記録するという。対して、日本の「食料・農業・農村基本計画」(3月末、閣議決定)には、「世界の食料生産の増加は困難」との見通しが記され、世界で唯一、穀物の計画経済指標を強化する方針が示されている。

 米国農務省を筆頭に、世界の主要穀物生産国の今年の生産量予想が出そろった。

農水省の穀物需給ひっ迫予想をよそに、「5月末の世界の小麦在庫量は、1億9582万tで、需要の29.7%まで積みあがっている」(米国農務省)。これは2002年以来、最大の在庫量だ。豪州とロシアが2年つづけて、30%超の増産をしたのが主要因である。米国単体の期末在庫率では47.3%と過剰な積み増し状況にある。
 過剰在庫を受け、シカゴ先物取引所は最安値を記録した1993年以来、もっとも弱気相場になっている。2010年の第一四半期の小麦先物価格は、ここ15年で最低価格を記録した。「8月ごろまでにブッシェル当たり4ドル(kg当たり14円)、景気が悪化すれば最悪で3・5ドル(同12円)まで低下する」(コモディティ情報システム社)との予測もある。

 米国では小麦作付面積が今期、過去40年で史上最低になる見込みだ。農家は価格下落が予想される小麦から、トウモロコシや大豆に作付けを移行している。小麦の作付面積は5383万エーカーで、09年に比べ10%近くも下降し、トウモロコシの面積は3%増、大豆は1%増となっている。

 この減産予想を反映して、「先3カ月の先物価格はブッシェル当たり5ドル(同17円)で推移し、10月頃には5・5ドル、年内には6ドル(同20円)まで上昇する」(ゴールドマンサックス社)との楽観的な見方もある。ただし、米国農務省の試算では、すべての米国農家が今年、仮に小麦の生産をゼロにしたとしても、世界の小麦供給量は現状の在庫水準と他国の生産見込みからすると、需要を21%も超えてしまうという。3年連続で世界の生産量が消費量を上回り、需給が大幅に逆転しているのだ。

 07年に小麦価格が従来の2倍になったことに刺激を受け、世界中で増産され、09年には、史上最高の年間6億8300万tが生産された。これまで6億t前後だった生産量が、わずか1年で8000万tも増えたのだ。これは、日本の小麦生産量の100倍、輸入量の15倍に相当する。

 世界のこうした生産余力をみると、日本の農水省が自給率向上政策の根拠とする「単収の伸び率低下と収穫面積の拡大の限界により、世界の食料生産の増加は困難」と断定する見解が、いかに現実離れしているかがよくわかる。

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