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近年、豆腐業界は衰退している。消費量こそ横ばいだが、昭和30年代に約5万軒あった街の豆腐屋は、現在、稼動しているところで約6000軒弱まで減少した。そしてスーパーでは豆腐の安売り合戦が続き、目玉商品として1丁1円で売られている光景を見ると、「どうして畑の肉と言われるぐらい大切な食べ物なのに、こんな扱いなのだろう?」とみじめな気持ちになってくる。
こうした状況は、街の豆腐屋が元気にならないかぎり打破できないと思い、ひとつの戦略として国産大豆を使用した豆腐をアピールしている。きっかけは京都の豆腐屋で修行していた頃、京豆腐は輸入大豆7割、国産大豆3割のブレンドが美味しいと教わったこと。ならば国産大豆100%で豆腐を作れば、ブランディングできるのではないかと考えたのだ。試行錯誤の末、京都で栽培した大豆、京都の水、京都のにがりを使用した豆腐を作り上げ、“地豆腐”の名称で販売した。現在では同じようにその土地の素材で豆腐を作る日本各地の豆腐屋と「地豆腐倶楽部」を発足し、連携している。
土地のうまさを豆腐で表現
「どんな豆を使っても、豆腐にすれば味は大して違わない」と主張する関係者は少なくない。しかし実際は近隣地域で同じ品種を栽培していても、山ひとつ超えれば大豆の味は変わってくる。
新潟県の朝日村に「一人娘」という在来品種の大豆を自家用に育てている生産者がいた。大豆をもらって豆腐を作ったところ、今まで食べたことのないクリーミーな味になり、著名な料理研究論家に食べてもらうと、「豆腐の領域を超えている」と驚いていた。品種を調べたら、もともとは山形県で「さといらず」と呼ばれている大豆で、朝日村で長年栽培しているうち、気候風土の影響を受けて独自性が定着したらしい。こうした在来品種の大豆は日本中に数え切れない数があり、探し出した分だけ、その土地土地のうまさを豆腐で表現できる期待が持てる。
支持される525円の豆腐
私の営む豆腐屋では、定番商品以外に、国産の在来品種を使って月ごとの豆腐を作っている。1丁、525円。1日で60丁ほど売れており、売り上げ以上の手ごたえを感じている。
コストの安い輸入大豆で作った豆腐は品質が安定しているのに対し、国産大豆で作ると仕上がりにブレがあるというのが一般的な見解だ。だから大量生産する大手メーカーは輸入大豆を使用するが、街の豆腐屋が同じことをやっていても、業界に漂う閉塞感を崩すのは難しいだろう。今はリスクを取ってでも、挑戦するべき時ではないだろうか。(まとめ・鈴木工)
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東田和久 ヒガシダカズヒサ
日本地豆腐倶楽部 代表理事
全豆連青年部活性化推進委員会 委員長
1958年石川県生まれ。高校卒業後、イトマンスイミングスクールにコーチとして4年間勤務する。その後、京都の豆腐屋で2年間修行して、京都市右京区に「久在屋」を独立開業。現在も同店代表取締役の他、全国豆腐油揚商工組合連合会の常務理事などを務め、業界の発展に尽力する。 http://www.kyuzaya.jp/
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