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ニンジン畑での決意
ところが畑の真ん中で大きなため息をつく私を尻目に、母はいつ終わるか先が見えない作業を黙々とこなしている。そんな母の背中を見ながら、私はつくづくと思った。
「お袋はたいしたもんだなあ……」
子供の頃からやんちゃで、少々アウトローな生き方をしてきたので、当時の私は人を尊敬するということを心がけてはいなかった。自分の目標が見つからない苛立ちもあり、むしろ両親や大人のいうことに対して、反抗期の子供のようにそっぽを向くようなところがあった。
しかし職業としての農業に接し、大人の大変さを知ったときに、両親や祖母、曽祖母といった自分を育ててくれた人たちの人生を思い、尊敬の念を抱くようになった。
それと同時に、こんな思いを抱くようにもなった。
母のように、農村でひたむきに生きてきた女性たちがたくさんいる。畑で忙しく働き、子供も育てていく、そんな女性たちが農村を支えてきたのだ。にもかかわらず、農業は「3K」以下とまでいわれることさえある。それに、自分自身、職業は何かと聞かれて「農業」と胸を張っていえないではないか。
これじゃ、駄目だ。農業を人が憧れるような仕事にしなくてはならない。もっと存在価値のある、もっと事業的な農業に―。このとき生まれてはじめて私は決心をした。
「よし、だったら俺が、農業を変えてやろう」
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木内博一 キウチヒロカズ
(有)和郷、生産組合(農)和郷園
代表理事
1967年千葉県生まれ。農業者大学校卒業後、90年に就農。96年事業会社(有)和郷を、98年生産組合(株)和郷園を設立。生産・流通事業のほか、リサイクル事業や冷凍工場、カット・パッキングセンター、直営店舗の展開をすすめる。05年海外事業部を立ち上げ、タイでマンゴー、バナナの生産開始。07年日本から香港への輸出事業スタート。現在、ターゲット国を拡大準備中。起業わずか15年でグループ売上約50億円の農系企業を築き上げた木内氏の「和のマネジメントと郷の精神」。『農業経営者』での連載で、その“事業ビジョンの本質”を初めて明かす。
木内博一の和のマネジメントと郷の精神
起業わずか15年でグループ売上約50億円の農業ビジネスを築き上げた“農業界の革命児”木内博一。攻めの一手を極める氏の経営戦略と思考プロセスを毎月、明かしていく。
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