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手上げ方式になる減反
九六年(平成八年)産から生産調整は「手上げ方式」になる。つまり減反に応じるか否かを生産者が選べる選択減反制が導入される。具体的な実施手法については九五年秋までに決定される。従来の一律減反制が、生産調整の公平感を追求するあまり、生産者に減反面積を強制的に割り当てるなど生産者の間で不満が強かった。「手上げ方式」は、この反省から導入された。
「手上げ方式」導入に伴い、減反を強制する役割を果たしてきたペナルティ措置も廃止を含めて見直されそうだ。そのペナルティ措置とは、一つは、転作未達成の場合の翌年度の転作目標数量へ加算すること、もう一つは、転作未達成の場合に各種補助事業の採択順位にハンデをつけることだ。
「手上げ方式」が導入され、ペナルティ措置も廃止を含めて見直されると、減反の強制はなくなるか。答えは「ノー」だ。
新しい減反について、農水省の考え方は「全体需給の調整が図られることを基本としつつ、生産者の自主的判断に基づいて実施されるようにする」(新たな米管理システム=論点整理)としながらも、一方で「流通の基本が自主流通米になることなどから、生産者団体の主体的取組みを助長していくことが必要」(同)と、これまで通りに農協が主体となって集落単位で減反を進める方針に変わりなさそうだ。
農協主体の調整作業に時間をかける減反スケジュールになりそうだ。一月に生産者が米の生産希望数量、水稲作付け希望面積、生産調整予定面積を市町村や都道府県を通じて国に報告、二月から五月にかけて国はその報告をペースに都道府県別に生産目標数量を通知し、都道府県は市町村に、市町村は生産者に米の生産目標数量、面積などを通知することになっている。
その際、都道府県、市町村段階で調整作業が行われるが、実際には農協が主体となって生産者との間で調整が行われる。
これが問題だ。今の農協に農家を説得する力があるかどうかだ。例えば、規模の大きい農家が、「規模拡大のため農地や農機などを借金をして購入した。減反に応じると返済計画が狂うので減反に参加できない」と態度を表明した場合、農協はどういう態度に出てくるか。おそらく集落のしがらみを使ってその農家にプレッシャーをかけてくるだろう。
農協に大規模農家を受け入れる度量がない限り、せっかくの「手上げ方式」も、従来の一律減反制度と同じように農家に不満を残す新制度となる恐れが十分にある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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