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集荷に新たな規制
集荷の規制緩和は米流通改革のキーポイントだった。その集荷の規制緩和は、許可制から登録制へ移行、その要件もいくぶん緩和されたりしたが、一方で新たな登録許可要件が付け加えられるなど規制緩和に逆行するような改正も行われた。集荷独占の崩壊を恐れた農業団体が、与野党の農政族議員に圧力をかけて農水省が考えていた集荷の改革を後退させてしまったのだ。
今回の流通改革では、集荷業者は「出荷取扱業者」に名称が変更され、国による業者指定から登録制となった。また売渡し先が多元化された。出荷取扱業者は、第一種と第二種の区分に分けられ、都道府県ごとに農水大臣に登録申請しなければならない。登録の有効期間は第一種、第二種とも三年で、三年ごとに登録を更新しなければならない。
登録の要件は、資力要件、信用要件および施設要件のほか、(1)申請者と出荷契約を締結した都道府県の区域内の生産者数が政令で定める数以上で、かつ出荷契約を締結した生産者の計画出荷米の数量が政令で定める数量以上であると認められない者、(2)申請にかかわる都道府県の区域内の第二種出荷取扱業者または自主流通契約を締結していない者である場合、登録を拒否できるが、それ以外は登録をしなければならない――というものだ。
生産者数や計画出荷米の数量について、ちなみに食管法では施行令で「登録生産者が三〇人以上五〇トン」と定められていたが、新食糧法ではこの要件が若干緩むことになりそうだ。このほか、新たな参入障壁として登場した減反協力の義務付けも含めて、新食糧法が国会通過の後に政省令で具体的に定められる。また生産者が複数の出荷業者と結びつくことを認めた。
減反協力を義務づけたことは、商人系の登録出荷業者を実質的に排除することにつながり、今後に問題を残しそうだ。つまり大半の商系の出荷業者は、農協とは違って複数の市町村をまたがって米を集めている。かりに減反協力要件が加わると、複数の市町村にまたがって営業を続ける出荷業者にとって、減反協力について複数の市町村と折衝することは実際問題として不可能であるからだ。
新たな新規参入条件は、規制緩和に逆行するばかりか商人系出荷業者の反発を招くことになり、食管制度下で起きたような集荷をめぐるトラブルが各地で起きることが予想される。
乱戦時代に入る米販売
今回の米流通改革で米の販売ルートは複線化された。米市場の開放時代にふさわしく農家や農業団体入り乱れての激しい販売合戦が、全国各地で繰り広げられることになりそうだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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