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苦土質肥料は、施用量オーバーに注意
次に苦土質肥料ですが、これはその化学的性質により2種類に分けられますが、一つは水溶性苦土で、もう一つは水には溶けないが土の中では徐々には溶けるというク溶性苦土です。
水溶性苦土は硫酸苦土が代表格で、ほとんどこれです。使うのは追肥の場面であったり、またうすく水に溶かして葉面施用も効果のあるものです。いずれもたいへんに早く効きます。この水溶性に対してク溶性のものは水酸化苦土があります。これは成分が高く、値段も割安ですが、失敗する例は施用量オーバーです。
よく土壌診断でマグネシウム飽和度が20%以上という畑にでくわしますが、話をきくとほとんどがこの水酸化マグネシウムの施用です。今回の内容を少し知っていたら防げるものでやはり我流はいけません。これとは逆にマグネシウム飽和度が10%以下の土壌では炭酸苦土石灰のみでは不足するマグネシウムを補うことはできず、取りあえずの硫酸苦土による追肥を行なうことを余儀なくされますが、元肥スタートの段階で必要量を水酸化マグネシウムで補うべきです。
塩基交換容量と塩基飽和度の関係
では石灰質肥料と苦土質肥料をうまく使うと、土はどのように改善されるのでしょうか。それには第一に、酸性土壌の改良があげられます。土を放っておくと日本では多雨によって酸性化します。稲や茶、パイナップルなどは、この状態でも育ちすが、麦、大豆、ビート、ホウレンソウなど、多くの作物はうまく育ちません。この原因を改善するのが塩基性肥料です。これを行なうと、チッソ、リン、カリの吸収がうまくいくのです。
また酸性土壌の中でも日本の火山灰土は特に劣悪な状態をつくります。それはアルミニウムの溶出で、この害はすごいものです。北海道の畑作のうまくいかない例を調べるとこの問題がよく浮上します。そして、土に石灰や苦土が不足すると、土壌微生物の活動がにぶり、土の構造が発達しなくなり、思うように土が改善されません。
では土壌中の石灰と苦土の含有レベルを、どの程度に保っておけばよいのでしょうか。目安として塩基交換容量が15me(ミリグラム当量)以上の土では塩基飽和度を80%程度にしておきます。また塩基交換容量が15me以下では90~95%ぐらいに高く保っておくことです。普段はあまり表舞台に立つことのない資材ですが、実に大事な役割を担っています。ぜひ興味をもって、いろいろな石灰、苦土肥料を調べてみて下さい。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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