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農水捏造 食料自給率向上の罠

ロシアの小麦増産は「日本の食糧安全保障の脅威」(農水省食糧部)ではない



 まず、ロシアの輸出伸長の直接要因は主に3つある。一つめは価格だ。「5月現在、米国産がトン当たり180ドルに対し、ロシア産の価格が167ドル」と1割強安い。二つめは小麦需要が増えるアジアや中東アフリカ諸国に近い地理的優位性だ。三つ目は、物流設備の余剰だ。これまでカザフスタンが小麦輸出に使っていた黒海港湾の穀物用施設をロシア・ウクライナが利用できるようになったためだ。これは、カザフスタンが農家に対して、小麦の連作を止め、菜種などとの輪作を奨励する政策を打ち出し、小麦の輸出余力が減った結果だ。

 次にロシア・ウクライナの輸出余力と競争力が生まれた背景要因をみていこう。

 第一の理由は、90年代前半のソ連の崩壊に伴う、計画経済から市場経済への移行だ。これまで非効率で遅れていた農業の生産性と農産物の貿易に一気にメスが入った。旧ソ連時代の87年から91年の間、旧ソ連は年3500万トンの大穀物輸入国であったのに対し、ロシア・ウクライナ・カザフスタンの3カ国だけで、2009年、5500万トンの大穀物輸出国に転じている。この輸出入差は9000万トンである。つまり、旧ソ連の経済システムの移行のおかげで、世界市場に9000万トンも多くの穀物が入手可能になったということだ。9000万トンは、2009年の世界の小麦、大麦、大豆を合算した総輸出量が2億4500万トンであることを考えると、いかに途方もない量かがわかる。

 輸出可能な余剰小麦がこれだけ発生した要因は、増産だけでは説明できない。じつは90年代、ロシア、ウクライナにおける畜産業の大幅な縮小と大きく関連している。旧ソ連時代、国営の畜産業や油製造業は非効率で高コスト体質であったが、計画経済による飼料作物と油脂作物の輸入によって維持されていた。しかし、ソ連解体後、国内の畜産業を保護する経済的な余裕がなくなった。その結果、市場原理に沿って、肉など畜産品が直接輸入されるようになった。そこで起こったのが、大幅な飼料輸入の減少である。同時に、農業が自由化され、国内生産の余剰が輸出に回るようになったのである。


社会主義崩壊が増収もたらす

 二番目の理由は、2000年代に小麦の収量が安定的に上がっていったことにある。これが輸出余剰を生みだした。90年代はソ連邦崩壊ののちの農業経済の混乱により、収量は下降していた。00年代の収量向上率は、92年から00年との平均比較で、ロシアで33%向上した(FAO統計から筆者算出)。資源がなく設備投資の遅れたウクライナでは微増にとどまった。

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