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農水捏造 食料自給率向上の罠

ロシアの小麦増産は「日本の食糧安全保障の脅威」(農水省食糧部)ではない


 収量向上は、新興生産者の登場に起因するところが大きい。買収による農場同士の合併と新規投資による生産性の向上を実施した。具体的には、機械の買い替え、品質の高い輸入種子の導入、経営の改善が行われた。現在、新興生産者は、原料生産に限らず、製粉、加工、流通まで垂直統合する事業体を形成しつつある。新興とはいえ、旧来の国営農場のソフホーズや社会主義的な組合農場コルホーズがもとになっている。違いは、民間の異業種投資家の参入や農業経営者の意識改革により農場の改革が劇的に行われた点だ。

 ただ90年代の小麦生産面積は、それぞれ80年に比べて、ウクライナで15%減少していた。他方、ロシアでは穀物全体の面積は30%減産したが、小麦の面積に変化はなかった。これは小麦作付を計画経済で優先し、他作物の生産を辺境に追いやった非効率な政策から脱皮し、市場に応じた供給先と面積の最適化が行われたことによる。2カ国の全体でみれば穀物生産面積は00年代半ばまで微増してはいるが、旧ソ連時代と比べ、小麦面積は微減していた。

 そこで起きた06年から08年の世界的な穀物価格の急騰は、減産していた休耕地利用を再熱させ、旧ソ連時代の作付面積を上回る増反をもたらした。米国農務省の2019年予測レポートでは、3カ国の穀物生産面積は00年代平均の20%増となり、小麦については旧ソ連時代の作付面積を超えるとみている。レポートによれば、化学肥料と農薬の適切な使用が増え、企業的な農場体の成長により生産性がさらに伸びるとみられる。農務省とERS(農業経済研究局)の共同レポートでは、01から09年の平均収量に比べ、2019年にはロシアで20%、ウクライナで17%の収量向上が見込まれる。

 これが実現すれば、ロシアとウクライナは1910年のロシア革命で終焉した帝政ロシア時代の歴史的地位「世界の穀倉地帯」を取り戻すことになる。ロシア・ウクライナの競争力向上に歩調を合わせて、米国では小麦を減産しはじめている。日本は脅威論を振りかざさず、両国との取引関係を深めていくしかない。ロシア・ウクライナ小麦の地政学的な分析を進めるときだ(続く)。

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