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【特集】
生産履歴データ100%活用術 「トレーサビリティ」からの脱却
- 編集部
- 2010年07月30日
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■駄農と篤農家の違いは日記をつけるかどうか
群馬県の農業法人野菜くらぶ代表・澤浦彰治氏は著書『農業で利益を出し続ける7つのルール』のなかで、駄農と篤農家の違いの一つは日記をつけるかどうかだと述べている。かつて野菜くらぶに出荷する農家の中に、毎年高品質な農産物を安定的に生産する人々と、毎年同じ失敗をして同じ言い訳をする人々がいた。品種や機械の違いではない。では、その違いは何かと調べたら、業績の良い人々はもれなく日記か農業日誌をつけていた。記録をつけることの意義は、このエピソードから明らかだろう。本特集では、そこから一歩進んで記録したものを、いかにして今日的な経営課題の解決に活かすかに焦点をあてた。
生産履歴データをこのように活用するには、3つの条件が必要だ。まず、(1)電子データとして分析できるようになっていること。そして、(2)分析手段が確立されていること。最後に、(3)分析した情報をスタッフにフィードバックする仕組みがあることだ。24ページからの事例紹介では、これらの条件を満たして生産履歴を活用している農場を取材した。
なお副題として「『トレーサビリティ』からの脱却」と記したのは、一方でこうした生産履歴が、取引先の要望に対応するためだけに記帳されている現実もあるからだ。本特集のサブテーマとして、そろそろ安全・安心のコストとしてのカッコつきの「トレーサビリティ」から脱却してはどうかと提案する。本来、記帳の主目的は農場の経営課題を改善することであり、トレーサビリティへの対応はその副産物であるべきだ。
トレーサビリティが農家に求められるずっと以前から、優れた篤農家たちは日記をつけていた。そこには農作業や生育の記録だけではなく、土地の気候や地形地質、花芽や植生の変化、山の稜線の見えかた、昆虫や動物など、農業に影響をおよぼす土地固有の自然条件についての記載があった。こうした「風土」を理解する感性こそが、篤農家たる条件の一つだったのである。現代の農業者にも、その感覚は重要だ。同時に、生産技術を継承して農場内で標準化することも大切だ。これらには農業の経験と感性を、数値化して伝えることが求められている。30ページからは生産履歴を記帳・分析するうえで役立つツールとして、各社から販売されているシステムを紹介する。各システムの基本設計や機能や価格を紹介、個々の農場に最適なシステムを選ぶための情報を提供する。
【事例紹介】生産履歴データ活用で経営課題を解決
単に生産履歴を残すだけなら紙とバインダーでもいい。ただしデータを定量的に分析・活用するためにはシステムが必要だ。ではデータ分析で何が明らかになるのか、どのような経営課題の改善に繋がるのか。トレーサビリティ情報を残しながら、生産履歴を活用している先進的事例を2つ紹介する。
■Case.1 栽培計画
契約栽培を中心にした経営で栽培計画の精度を高める●(有)トップリバー(長野県御代田町)
浅間山南麓、軽井沢町に隣接する長野県御代田町。ここを本拠にした(有)トップリバーは2000年の創業から、外食・中食との契約栽培を中心に販路を拡大している農業生産法人だ。求められるものを、求められる品質・数量・納期・価格で供給するマーケットイン型の農業を実践している。また従来の家族型経営から脱却し、生産技術だけでなく営業力やマネジメント能力を備えた人材の育成を目指している。
社員30名、夏場はアルバイトを含めて80名が働く。09年度の年商は10億6000万円。品目は、レタス、グリーンリーフ、サニーレタス、キャベツ、ハクサイなど露地の葉物が中心だ。御代田町の第1~4農場が合計約20ha、富士見町の第1~2農場が合計約10ha。各農場に20~30代の社員が配属されている。農場長には多くの権限が委譲され、人材育成の要諦となっている。
02年に嶋崎田鶴子専務がイズミ農園(山梨県北杜市)開催のトレーサビリティ勉強会に参加、はじめてトレーサビリティの考え方の基本を知る。以後、工学部出身の嶋崎専務が同社のシステム開発を進めてきた。
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