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自分の経営を客観的に診断する

法人化で節税、社会保険を装備

 次に総資本経常利益率を見てみましょう。経常利益は、企業の経常的な活動による利益を表したものです。したがって、企業の投下した総資本に対する経常利益の割合、「総資本経常利益率」は企業の収益力を測る代表的な指標です。この指標の算式は次のとおりです。

総資本経常利益率(%)=経常利益/総資本×100

 経常利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益に、受取利息などの営業外収益と支払利息などの営業外費用を加減したものです。ここでは支払利息を除く経費のうち、荷造運賃手数料、交際費、旅費交通費、事務通信費、研修費、諸会費、広告宣伝費および租税公課のうち消費税と専従者給与のうち経理を仕事の中心とする妻の分を一般管理費とし、それ以外は売上原価としました。

 C農園の場合、総資本経常利益率は八・五%となります。中小企業におけるこの数値の平均は六%弱であることから、一見すると申し分ないように見えます。しかしながら、 C農園は個人経営であることから、経営者本人の人件費が経費に含まれていません。経営者本人の報酬を考慮し、かりにその金額を弟への給与とほぼ同額の六〇〇万円とすると、総資本経常利益率は四・三%となってしまいます。

 なお、総資本経常利益率の分母の総資本は、原則として期首と期末の平均額をとりますが、ここでは総資本で計算しました。

 このように経営者本人の報酬を考慮すると投下資本に対する収益性に若干、問題があることがわかります。売上高総利益率では高い収益性を示しているにもかかわらず、総資本経常利益率の数値が思わしくない原因としては、次の二つが考えられます。

 一つは、分母の総資本が大きいのではないかということ。分析のため、総資本経常利益率を次のように資本回転率と売上高経常利益率に分解してみましょう。

総資本経常利益率(%)=経常利益/売上高(売上高経常利益率)×100×売上高/総資本(資本回転率)

 そこでC農園の資本回転率を計算してみると約一・〇回で、中小企業の平均の一・六回をかなり下回っています。この数値は農業の形態や自作地の割合などによって大きく異なりますが、本連載の第 2回の稲作中心の有限会社Aで約三・五回、第3回の野菜作のBさんで二・二回です。C農園の場合、総資本の三七%が上地に投下されていますが、いいかえれば、規模拡大の割には売上高がさほど伸びていないということです。

 経営者の話と総合すると、施設園芸という集約的な農業にもかかわらず、規模拡大のために生産がやや粗放的になっているという現状の問題点が浮かび上がりました。今後は、農地など現有の資源を有効に活用して、いかに生産効率をあげるか、が経営の課題となるでしょう。

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