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自分の経営を客観的に診断する

法人化で節税、社会保険を装備

 この点、平成六年度予算で創設されたスーパーS資金(農業経営改善促進資金)がまさに格好の資金です。スーパーS資金の金利は現在の金利情勢下で三・三%、融資限度となる極度額は施設園芸の場合、個人で二〇〇〇万円、法人で八〇〇〇万円です。ただし、C農園の地元の市町村では、農業経営基盤強化促進法による「基本構想」が策定されていないため、基本構想に基づいて「認定農業者」に認定されることが融資条件となるこの資金は、残念ながら平成六年の時点ではまだ利用できません。


法人化で福利厚生を充実


 C農園の経営の課題は、前述したように、投下資本の効率的運用にあります。具体的には、農地の有効活用があげられますが、そのためには、さらに一層の労働集約的な経営が必要となります。とすると、C農園に今後必要なことは、優秀な労働力の確保でしょう。C農園の経営者もそのことはよく認識しており、その前提条件を整えるために選択した方策が、経営の法人化です。C農園は平成六年七月に農事組合法人として再スタートしました。人材の確保には、福利厚生の充実が不可欠ですが、C農園では法人化をきっかけに社会保険や労働保険に加入し、さらに退職金の積立制度にも取り組みました。

 C農園が加入した健康保険は政府管掌の健康保険です。健康保険組合が運営する組合管掌の方が保険料が安く、給付内容もよいため、できれば農林漁業団体を加入対象とした健康保険組合に変更したいという希望をもっています。

 年金は農林年金に加入しました。農林年金とは、農協などの農林漁業団体の職員を加入対象としたものです。C農園は法人の形態を農事組合法人としましたが、農事組合法人は農協法に基づいて設立されることから、その従業員は厚生年金ではなく、農林年金に加入することになります。農林年金の保険料率は一〇〇〇分の一六三で厚生年金の一般男子の一〇〇〇分の一四五より高くなっていますが、その一方で給付も厚生年金相当部分に加えて職域年金相当部分が上乗せされます。なお、経営者本人は農業者年金に加入していましたが、農林年金加入により農業者年金は脱退しました。

 退職金の積立制度は中退金です。中退金では、新たに加入した月の翌月から二年間にわたって掛け金の三分の一について国の補助が受けられます。

 C農園がその法人形態を農事組合法人としたのは、C農園の経営者が地元の農協の理事をしていることもあり、組合の形態の方がなじみやすかったためです。法人化するのに有限会社と農事組合法人のどっちがよいかという議論がありますが、要は、法人化をきっかけに経営者がいかに自己の意識の変革を行うかということです。「社長」という肩書きにこだわるのなら有限会社にした方がよいのでしょうが、「組合長」または代表理事の肩書きでも経営者としての自覚がもてるのであれば、農事組合法人であってもなんら遜色はありません。

 なお、農業生産法人の資格をもつ農事組合法人は、一般に利益に対して最低でも六%かかる事業税が非課税となることを一言つけ加えておきます。

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