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ちょっとちがうぜ中国で農業

放射線照射分析という障壁



 中国で乾燥野菜を扱っている日本出資のD社は、「これで中国の乾燥野菜会社と競争できる」と検知技術の導入を喜んでいた。中国の食品会社では、清掃や洗浄をろくにせず放射線照射で簡単に済ませて商品にしてしまうことも珍しくない。それに比べてD社は、見学に行ってみると、ここまでするのかというほど極めて厳重な管理をしている。その強みを発揮できる好機の到来というわけだ。だが、この検知技術は、後にD社にとって大きな障害となる。


“白”が“黒”にされる

 D社が日本に輸出する乾燥野菜も厚生省が行なう放射線分析にかけられたが、その結果は「違反の可能性がある」というものだった。作業工程で放射線を一切使っていないにもかかわらずだ。

 そこでD社は、違反とされた貨物を独自に冷凍食品検査協会やほかの検査機関に提出し、検査を依頼した。すると、判定はすべて“白”。放射線照射分析方法を開発した人物で、世界的権威でもあるスコットランド大学のサンダーソン教授にも分析を依頼したが、その結果もやはり“白”と出た。

 なぜこのようなことが起こるのか。厚生省の分析は独自の方法によって行なわれており、食品総合研究所の技術者などから不備を指摘されている分析方法だったのだ。

 厚生省は、今年3月から放射線分析方法を国際基準に切り替えて実施しているが、D社の商品が“黒”と判定されたのは昨年9月のこと。それ以来、商品を出荷するたびに放射線照射分析にかけることが義務付けられている。その費用は、これまでで1000万円を超えるという。分析結果について異議を唱えても受け付けてもらえず、いまだに違反食品の濡れ衣を着せられたままだ。

 食品への放射線照射が世界で一般的な処置方法になっているなか、その使用の有無を判定する分析方法の誤りによって不合格とされ、出荷者責任として分析費用まで支払わされている企業があるという事実をどう受けとめればよいのだろう。中国同様、日本もお上に従うほかないのだろうか。とにかく、日本という国の安全性は、かくのごとき有様だ。海外で農産物をつくり日本に輸出する場合は、こういった障害もリスク要因として考えておく必要がある。

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