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視点

音楽が農業にできること

音楽業界でイベントの企画や制作、ミュージシャンのマネジメントなどに携わってきたが、音楽の産業化が進む中で、啓発や喜怒哀楽を伝える音楽の本来の役割が失われていくことに違和感を感じていた。そんな折、野菜嫌いな息子が祖母とホウレンソウの収穫に行き、「おいしい」と食べ始めたことがあった。その体験をきっかけに食や農業を強く意識しだし、自分も何かできないかと野菜と音楽の祭典「菜音」を始めた。

 音楽業界でイベントの企画や制作、ミュージシャンのマネジメントなどに携わってきたが、音楽の産業化が進む中で、啓発や喜怒哀楽を伝える音楽の本来の役割が失われていくことに違和感を感じていた。そんな折、野菜嫌いな息子が祖母とホウレンソウの収穫に行き、「おいしい」と食べ始めたことがあった。その体験をきっかけに食や農業を強く意識しだし、自分も何かできないかと野菜と音楽の祭典「菜音」を始めた。

 「菜音」は、ミュージシャンが登場するステージを中心に、農産物直売所、体験型ワークショップ、トークショーなどを展開する、農に焦点を当てた音楽フェスティバルだ。音楽には、頭では理解しにくい事柄もすんなりと心に届けられ、人を変えられる力がある。現代に唯一残された魔法のようなものだと思う。そこで農業や食が抱えている問題を堅苦しく講義するのではなく、より楽しく広めていくところに音楽や自分たちの役割もあると考えた。

 自分が4児の父ということもあり、親子が共に体験しながら食や農業について学べるような“共育”の場をつくることをテーマにしているが、こうしたイベントに対する来場者のニーズも感じている。音楽が目的の来場者も、子供と一緒に参加し、アナログ的なコミュニケーションの中で学べる環境を気持ちよく捉えてくれている。


イベントからプロジェクトへ

 今年3月にキューバを視察した際に、日本とはまた違う農業のあり方を目にし、全く未知の分野だった農業に対する固定観念が溶けてきた。また、日本の伝統や知恵が断絶しつつあることも知った。自分たちを含めて、農業や背景にある文化を学び直す機会をつくる必要性を強く感じている。

 とはいえ、一時的なイベントだけでは伝えきれないこともある。そのため、年間を通じて活動するプロジェクトの一環として体験ファームも構想している。自分自身が、ある農家に足繁く通って一緒に作業することで信頼関係を築き、ようやくを借りられた農地だ。いずれここで、都市部の若者が農業体験できるツアーも実現したい。


47都道府県での開催が夢

 誰もがミュージシャンという仕事ができるわけではないように、農家の仕事も誰もができることではない。それだけに農業や農家が、音楽やミュージシャンと同様にリスペクトされる世の中になってほしい。そのためにも、まずは年一度開催している「菜音」を継続し、広げていきたい。音楽フェスティバルに馴染みがない人も多いため現在は試行錯誤の段階だが、先々は興味を持っていただける農家さんと連携して、47都道府県で開催することを夢見ている。(まとめ・鈴木工)

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