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海外レポート

豪州ビクトリア州農業視察レポート(4) ビクトリア州の野菜&果物 中編 効率性を追求した3農場を解剖する

オーストラリア第二の都市メルボルンを有するビクトリア州。この地では、どのような野菜・果物が栽培され、流通し、消費されているのだろうか。弊誌が去る3月に企画した「Made by Japanese視察ツアーin ビクトリア州」に参加した、らでぃっしゅぼーや(株)事業本部 MD部 農産課長の森﨑秀峰氏の寄稿をさらに2回にわたってお届けする。中編は、野菜苗最大手のブーマルー育種圃場、親子経営のラバール農場、輸出にも積極的なガゾーラ・ファームの3農場より、青果物の目利きが生産現場をレポートする。

ブーマルー育種圃場(ララ地区)

 最初に訪れたのは、オーストラリア最大の苗生産販売会社である。敷地面積は、18ha(45エーカー)で、その中に、オランダから輸入してきた66棟のハウスが立っている。苗の生産は、ハウスのほか、風除けネットで守られた露地部分でも行なう。1985年の創業で、当時からの総投資額は約5億円(約600万豪ドル)。年間の苗の供給量は約2億5000万株、年商は約20億円であるが、施設はまだ拡大中だ。

 この地域の気候は、冬場の外気温が0~1℃になるため、加温設備も充実だ。またハウスの管理は、ウェザーステーションを備え、コンピューターシステムによって行われていて効率的である。施設内に入ると、苗トレーはスチールフレーム単位で管理されており、トレーの移動は自動化されている。ただ、制御装置がうまく稼働せず、スチールフレームの移動機器がハウスの壁を打ち破ってしまうということも起こるらしい。訪問当日は、修理している風景も見ることができた。それを考えても、破損被害は微少で、自動化するメリットは高いという。

 種や資材の納品から、出荷までを通して、すべてトヨタのカンバン方式である、ジャストインタイムを基本に、独自に組み立てられている。種は2日に1度の納品、その他も同じように必要な分量を必要なときに納めてもらい、農家が必要な量を必要なときに生産・出荷することに徹していることが伝わってくる。

 培養土は松の木屑にバーミキュライトを混ぜた物のようだ。また種はポーランドのメーカーから購入しており、以前から比べるとかなり高くなったが、作業性を考えるとこの方が安いのだという。ちなみに、トマト、ピーマンは1粒当たり約35円(40豪セント)、レタス類は1000粒当たり約3800円(45豪ドル)。種はコーティングされ、発芽がそろうようにオーダーしているという。また、販売価格は積み上げの計算で提供しているそうだ。つまり、種代+資材代+管理代+輸送費ということになる。他の業者と比べると初期投資にかなりの金額はかかったが、ランニングではシステムによる自動化が功を奏し、大幅にコストを削減できた手ごたえを得ているようだ。なにしろオーストラリアの人件費は高いので、そこをコントロールすることが要だという。

 圃場は年間365日の営業で、昼勤(午前6時~12時)は毎日であるが、夜勤は金曜日が休みだという。シフト勤務であるためか、トヨタシステムを導入しているためか、作業場にはたくさんの作業についての掲示物が目についた。それは、シフト表であったり、作業引き継ぎであったり、人が入れ替わってもわかりやすくしているのである。

 また夏場は苗の生育が思わしくなく、販売数量が伸びない。施設稼働率が落ちるため、母の日(日本と同じく5月第2週の日曜日)に合わせた鉢植えのシクラメン栽培で、売上と利益を立てる戦略だ。

 案内してくれたイアン・ウィラート氏は、「機械化による効率化で、人件費を削減することによって、低コストで、さらにジャストインタイムで生産する、苗生産販売会社を目指している」と話す。出荷直前の苗を見る限り、日本でいうと老化苗に値するものばかりだ。これが標準だと言われたが、畑でどうなるんだろうと、実際の生産現場への興味が掻き立てられた。

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