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土門「辛」聞

米穀データバンクの作況指数「102」を信用する?



 今年は、田植え前に温度が低く、プロの農家でも育苗に失敗したケースを耳にした。これを苗半作というが、米穀データバンクの予測には、このファクターが入ってこない。ジェット・コースターのように気温が急激に変化する気象条件の下では、稲もストレスを受け、決して順調に生育しているわけはないと思っていたら、米穀データバンクが「102」という数字を出してきたのだ。これには意外な感じを受けた。そこで、主産地のプロ生産者に生育状況を問い合わせてみたら、やはり、分けつが少ないとか、実が細そそうとか、稲の姿に元気がないとか、順調に生育しているというレポートではなかった。お盆明けには、「全体的に豊作に見える稲姿だが、実際に刈り取ってみると、収量は少なくなるのではないか」というレポートもあった。

 ご存知かと思うが、農水省統計部も作況指数を出している。だいたい米穀データバンクの数字が出た後に公表されるが、なぜか米穀データバンクの数字と同じ結果がだいたい出てくるのだ。こちらは農政事務所が全国2万カ所でつぼ刈りを実施して作況指数をはじき出してくるのだ。それなのに、米穀データバンクと数字が同じというのは、よほど組織的か構造的か、どこかに問題があると言わざるを得ない。

 積算温度だけでは正確な作況指数は絶対につかめない。というのも、農家の技術力が大きく低下していることを無視しているからだ。さらに、農協や普及所の指導する力も落ちている。特に農協は、広域合併でどうしても技術指導に手を抜きがちだ。それと農家の高齢化もある。長年の低米価で農家の生産意欲も昔ほどはない。結果的に、今年のように温度が大きく振れるジェット・コースター型の気象変動には技術が追いつけないと思われる。

 役所による人災的な要因で稲の生育にトラブルが生じることもある。その典型例が、「エコ農法」ではないだろうか。エコと称して鶏糞を田圃にぶち込んで生育障害を起こしていることだ。役所は堆肥を投入せよと指導しているが、農家は、財布にエコということなのか、値段の安い鶏糞をぶち込んだ結果、ガスが発生して根の部分を痛めてしまうのである。鶏糞を田圃にぶち込めば、本来だと、微生物を使ってガス対策をやる。だが、それをやると、財布に「エコ農法」とはいかないので、そこで手を抜いてしまうのだ。通常の施肥に比べて、最低でも5%は収量が落ちると言われている。

 しかも昨今のように猛暑だと、積算温度はすぐにクリアしてしまうが、高温による生育障害が出ても、そんなことに関係なく作況指数を機械的にはじき出してくるだけだ。米穀データバンクが、そうやって作況指数を出すのは、別に何も問題はないと思う。これは情報の受け取り方の問題であって、それを鵜呑みする方に問題があると思う。主産地でこの情報を有り難がっている光景を見ていると、何やら滑稽な感じがしてならない。この出来秋が、安値相場でスタートするのは、この作況指数のおかげではないかと思ってしまうのである。

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