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【坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス】
学校に行ってみよう!
- 農業生産法人 株式会社さかうえ 社長 坂上隆
- 第20回 2010年08月31日
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今年の4月から九州大学の大学院に通っている。専攻は農業資源経済学・農業経営学。鹿児島から福岡のキャンパスに通学している。入学試験では、試験官の教授陣からは、「学費は払えるか? 受かったら、ちゃんと通学するか?」と念押しされた。こっちは大真面目だ。目下のところ、興味のあるキーワードは、「IT(情報)」、「経営」、「人材育成」である。
農業の実業の世界で、実践を積み重ねてきた私が、研究の世界に足を踏み入れたのにはワケがある。ある日、「はやく学校にいかなきゃ。遅刻する!」と夢に見たことがあった。年甲斐もない笑い話のようだが、潜在意識の中では、学校の存在がずっと気になっていたらしい。
「自分の思考の枠組みをどれだけ広げられるか」 これがここ数年来、私のなかで最大のテーマだ。この広がりこそが、自分のあり方、ものの考え方、行動を規定する計り知れない力を持っているからだ。人生そのもの、と言ってもいい。もう一つのテーマは「巨人の肩の上に乗る」だ。人類が積み重ねてきた知恵、知識、経験をしっかり踏まえて、次世代に向けて自分が何をすべきか見据えさせてくれる言葉だ。
学校に通うようになった経緯は、2つのテーマを熟成させた結果、次の問題意識に達したのだ。「農業界で実践してきたことを知の最前線に位置する研究と融合させることで、世の中にもっと役に立つことができるのではないか」。抽象的な話だが、心底そう思っている。さらに、大学に通えば、論文や研究成果を成文化する中で、頭の中の思考や構想を伝える訓練ができるという狙いもある。
農業を言語化する意味
経営学という学問は、企業経営に関わる経済的・人間的・技術的側面が研究対象だ。つまり、産業界で成功を収めている経営者の事例の記録である。とすると、誰かお手本になる人がいないと、記録作業も研究も進まない。新しい発明や発見は、研究者が先に行なう方が多いが、この分野では、研究者が経営者の先を行くことはない。一方、農業の研究に抱いていたイメージは、ひとことで言えば、技術だ。品種の改良であったり、農薬の使い方であったり、農法であったり、現場との接点は、技術交流くらいだった。それは、農業の研究が現実とかけ離れているからだと言わざるを得なかった。待っていても、なかなか状況は変わらない。それよりも、われわれ農業の実践者サイドからできることは、研究サイドに歩み寄り、もっとお互いを高め合う対等な関係になることだ。既定の枠を変えるためには、そのくらいのことが必要だ。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
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