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【過剰の対策、欠乏の克服】
穴掘り診断が見破ること
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第75回 2010年08月31日
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土壌診断は意外と簡単大事なのは「穴掘り調査」
畑や田んぼの悩みはつきません。思うように収量と品質に達したことなど、数えるほどではないでしょうか。それどころか顔の青ざめるような収穫期も何度も経験していると思います。そんな悩みを解決する答えはどこにあるのでしょう。
いろいろ考えながらさまようのですが、その答えは自分の畑や田んぼにしかありません。幸い自分の畑や田んぼはいつでも調べることができて、何度調べても文句を言われません。
前述の悩みを解決する方法の一つが、土壌断面調査です。通称「穴掘り診断」とも呼ばれます。しかし農業で食べている人のほとんどは、実際の体験がありません。それどころか話に聞くこともない。これは一体、どうしてでしょうか。
その理由は、それを普及する立場にある人も、実際にやったことがないからです。仮にやったことがあったとしても、農家を相手に診断行為として行ったわけではないとか、農家は全くいない状態で行政マンだけの間柄でやってみたとか、そういうことがほとんどなのです。
つまり診断行為に職業人としての命をかけていない、とも思わざるを得ません。診断の結果には、それまでより良くなるか、変わらないか、それとも悪くなるか、この3つしか評価はありません。しかし日本の農業指導では、診断の結果で現場が良くなったいう話も、反対に悪くなったという話を聞くこともありません。最も耳にするのは、診断が行われていないということです。
現場の診断は実際にやってみて悩み、うまくいかなくて苦しみ、批判されて委縮して、白い眼で見られてくじけてと、これを数限りなく繰り返して少しずつ現場が見えてくるのでしょう。
しかしこれは言うことは簡単で単純明快ですが、いざ実行となるとなかなか難しいことです。例えば医療分野では、医師が一人前に育つまで様々な仕組みが出来上がっています。また、これを育てる周囲もそのつもりで心得ています。
しかし農業界はその逆のような気がします。若い指導員が来れば、その意欲がうすれてしまうような雰囲気をつくったり、困ることがわかっている質問をしたり、とにかく農家のところに行く気がなくなるようにする気風があるのです。
これは想像ですが、医療分野の場合は長い歴史と蓄積があって、また得られる利益から考えても比較にならないほど各分野にハイテクが導入されており、それが診断の確実性を高くしています。
それと比べてみると土壌診断などは、何十年も前とほとんど変わっていません。変わったことといえば何かというと、もしその指導通りやってうまくいかないときはどうするんだ、というレベルの低い話が増えてきたことぐらいでしょう。
その一方で、圃場がうまく改良されてこなくて困っている人は無限にいます。これはどうやって解決すればよいのでしょうか。答えはもう一つしかありません。農業生産にたずさわる人自らが、土壌診断ができるようになることです。
こうした話をすると、それは無理だという感想をもつ人もいます。しかし、これを提言するには理由があります。それは自ら土壌診断するのは意外と簡単なことです。しかも土壌化学性分析も大事ですが、より大事なのは土壌断面調査です。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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