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バナナの自動販売機と現代人
- 株式会社ドール マーケティング部 エグゼクティブ・マーケティング・スペジャリスト 大滝尋美
- 第77回 2010年09月29日
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当社では2010年6月から、日本初となるバナナの自動販売機を都内2カ所に設置した。この機械は菓子パン用の自動販売機を改良したもので、庫内の温度をバナナの保存に最適な13℃に設定できる。また商品購入の際にバナナを傷つけることがないよう、ベルトコンベアで商品を優しく搬送する仕組みになっている。バナナ販売価格は1本130円、1房(約600g)390円である。1カ所は稲城市の会員制スポーツクラブ、もう1カ所は渋谷駅の地下鉄出口に直結する通路に設置し、渋谷だけで2カ月の間に4,500本のバナナを販売することができた。
新たな“接触”の機会を創出
米国では、1991年から農産物健康増進基金と国立がん研究所が協力して、「5A DAY(ファイブ・ア・デイ)」という健康増進運動を展開している。これは生活習慣病予防のために1日5サービング(皿)以上の野菜と果物を食べることを推奨するもので、オフィス街や学校などで青果物と接触する機会を増やす試みがなされている。実際に米国人の果物摂取量は、日本人の約2倍もある。
日本では若い世代を中心に果物を食べる習慣が薄れつつあるが、一方でバナナの消費量は伸びており、今や世帯あたりの購入数量が最も多い果物となっている。朝バナナダイエットがブームになったことは記憶に新しいが、栄養バランスに優れるバナナは食事の代替品にもなる。米国のように日常生活の中で接触する機会を新たに創出すれば、食べるきっかけがさらに広がるのではないかというのが、自動販売機導入の狙いである。
新たな“接触”の機会を創出
渋谷の設置事例では、通勤前に朝食として購入したり、遊びに行く前に小腹を満たすなど、日常生活の様々なシーンで利用していただいているようだ。自動販売機の横には専用のごみ箱も併設しており、その場で皮を剥いて食べていく人もいる。こうした利用実態からうかがえるのは、都市に暮らす現代人は、常に時間の短縮を追求しているということである。不規則な勤務時間や残業に追われるライフスタイルの中では、食事や買い物さえも“時短”の対象になる。料理はもちろん、スーパーに足を運んでレジに並ぶ時間すら負担に感じる人は少なくない。
その点、自動販売機はその場で必要なものを必要な量だけ買うことができる。しかもそれが駅構内など生活の動線上であれば、これほど効率的なものはない。このスピード感こそが、現代人にとっては重要なのである。
今後はビジネス街や大学構内への展開を進めると同時に、バナナ以外の品目についても、導入の可能性を模索していきたい。(まとめ・土井学)
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大滝尋美 オオタキヒロミ
株式会社ドール
マーケティング部 エグゼクティブ・マーケティング・スペジャリスト
東京都出身。大学卒業後、マーケティング企画会社に入社。ニュージーランド・キウイフルーツ・マーケティングボード・ジャパン(現ゼスプリ インターナショナル ジャパン株式会社)勤務を経て、1994年に株式会社ドールに入社。マーケティング部に配属される。2001年よりファイブ・ア・デイ(5 A DAY)協会設立に携わり、2002〜2007年まで同協会の事務局長を兼任し、現職に至る。
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