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特集

「奇跡のリンゴ」は、なぜ売れたのか〜「木村秋則」現象を追う〜


 これに対して、木村秋則氏の「自然栽培」や福岡正信氏の「自然農法」では基本的に外部から投入しない。そのかわり土の中の微生物の力を利用して、生態系内の物質循環を活発にすることで作物に養分を供給する。また農薬を使わないことで農地に多様な生物相を発達させ、生物間の相互作用によって病害虫を抑制する。

 「ただし自然農法と自然栽培は実際にはかなり違う。福岡氏は何もしない放置栽培だったのに対して、木村氏は積極的に畑に管理の働きかけをする。化学肥料や堆肥は投入しないが、畑で育った緑肥を鋤き込んだり、例外的な外部からの投入として、食酢を撒いたりもする」と杉山氏。

 つまり食酢は農薬の代替なのかというと、それほど殺菌作用はない。

 「食酢は殺菌ではなく、違う目的だと思う。私は“微生物の関係性を変える”と呼んでいる。良い微生物を強くして、悪い微生物を抑えるというようなものではないか」

 また木村氏の「自然栽培」は、福岡氏の不耕起栽培と違って、耕起したりプラウをかけたりもする。

 「ワラを分解させるのに、やはり水田だと鋤き込む必要がある。ただ、空気中で乾燥して観察し、時期を見極めてしている。でも全部が全部、耕起するわけでもない。そういう技術の柔軟性がすごくある。原理的には、作物そして生態系の持っている能力を最大限に発揮させる農業形態といったらいい」ということだ。


■科学的に説明できないだから研究価値がある

 木村氏の「自然栽培」の特徴は、土の中の微生物を活性化させることに大変注力することだ。これは有機栽培のように、堆肥を投入することで養分を補うのではなく、物質循環によって微生物による無機化を促進して、作物に養分を与える生物相を整える働きかけだ。この物質循環について杉山氏は、こう解説する。

 「農地に雑草や大豆や緑肥を植えて、それを耕して微生物に分解させる。その活性を高めることで、地上と地下の循環をよくしてエネルギーや元素をまわしていく」

 ただ単に緑肥としてマメ科植物を植えるだけではない。それを引き抜いて根粒菌のつきかたを定量的に観察し、土の中の窒素量を推定する。しばしば教科書にない観察力が求められるのも「自然栽培」の特徴だ。窒素はマメ科植物の根粒菌が供給してくれるだろう。しかし、リンやカリ、その他の微量元素はどう考えればいいのだろうか。

 「例えばリンゴ園では下草を刈らずに生やす。下草は自根では吸収できないリンを、根についた菌根菌から吸収できる。下草が刈り取られて畑に戻されると、利用可能なリンが土に入る。そもそもリンは土壌中にたくさんあるが、植物が利用できないだけ。つまり今まで利用できなかったリンを、菌根菌を経由して利用できるようにしている。カリや微量元素も特に補給しなくても不足していないが、正直言ってそのメカニズムはまだよくわからない」という。

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