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特集

「奇跡のリンゴ」は、なぜ売れたのか〜「木村秋則」現象を追う〜


 その良い例は日本各地の里山だ。里山で火入れをしたり、家畜の飼料を刈ったりすることを通じて、日本人が脈々と生産性の高い生態系を維持してきたことと、木村氏の自然栽培には共通性があると杉山氏は指摘する。「自然栽培」が自然の状態にほどほどに手を加えて理想的な生物相を維持する農業技術なら、その科学的解明によって、今よりも普遍性のある技術になるかもしれない。


PART4 技術 今の技術がすべてではない自然栽培で大規模経営25ha

自然栽培は大規模経営に向かない技術なのか? 普遍性のある農業技術として確立しうるのか?自然栽培で大規模経営をしている農場があると聞いて北海道幕別町を訪ねた。

 「作物をきちんと見ること。木村氏は何が優秀かというと、ずば抜けた観察力がある。あの観察力を持って技術の基礎ができている。いかにして観察するか、観察のポイントとしてどこに重点を置くか、見逃してしまうようなことを教えてくれる。その辺がすごく勉強になる」木村秋則氏から学ぶことについて、折笠健氏はこう語る。

 父親の折笠秀勝氏は十勝地区の火山灰土壌部門でビートの反収がトップになり、表彰された経験もある。しかし地力の衰えに危機感を持ち、大量の施肥が必要なビートをやめた。それ以来「開拓時代の豊かな土を取り戻したい」を合言葉にして、親子で地力を維持できる持続的な農業のありかたを模索している。

 「それまでの農業は対症療法だった。肥料を入れるために出る病害虫、それに対して撒く農薬、また出る新しい病気、それまでの農薬が効かないから撒く違う農薬。作物の性質をきちんと見ていなかった」という折笠氏。自然栽培の導入は、どのように農業経営を変えたのだろうか。


■3分の1は緑肥生産性よりも継続性

 折笠氏の経営面積は約70ha。そのうち25haを自然栽培、残りの45haを特別栽培レベルで栽培している。

 自然栽培の圃場25haの内訳は、大豆(大袖の舞)7ha(ゆきぴりか)1ha、黒大豆1ha、黒千石1.2ha、小豆3.3ha、ジャガイモ(花標津、さやあかね)2.9ha、春小麦1ha、そして緑肥(ヘアリーベッチ、エンバク)8haとなっている。

 特別栽培レベルの圃場45haの内訳は、ジャガイモ(メークイン、ホッカイコガネ、花標津、インカのめざめ、ノーザンルビー、シャドークイーン)20ha、カボチャ1.7ha、トウモロコシ0.5ha、そして緑肥(ヘアリーベッチ、エンバク)21haだ。

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