記事閲覧
【過剰の対策、欠乏の克服】
土のアルミニウムを知る
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第76回 2010年09月29日
- この記事をPDFで読む
日本では話題にならないアルミニウムの働き
日本ではあまり話題になりませんが、諸外国ではごく普通に農業現場でアルミニウムについて語られることがあります。もともとケイ素や鉄、そしてアルミニウムは、地殻や土壌の中に大変多く含まれる物質で、農業との関わりは無視できないものがあります。
ケイ素は水稲へのケイ酸カルシウム、いわゆるケイカル施用でおなじみです。鉄はやはり水田に施すことで水田土壌の老朽化を防いでいます。ところがアルミニウムは出番がありませんでした。
それが最近、ジャガイモのソウカ病をはじめ、土壌病害の発生メカニズムに大きく影響しており、抑制作用のあることが解明され始めました。これは土壌中のリン酸の動きとも連動しています。連作と施肥設計の誤りが原因で土壌成分のバランスが崩れてしまい、土壌病害の発生を助長することは皆さんもよく知るところでしょう。
このリン酸過剰とアルミニウムの土壌病原菌の活性抑制は、今回の話と関連があります。とにかくアルミニウムが作物栽培に深く関わっていることは理解できたと思います。「ミョウバン」という硫酸カリウムアルミニウム12水和物の通称で示されるように、私達の生活のなかでアルミニウムは「バン」と呼ばれています。汚水処理では硫酸バンドという呼び名で硫酸アルミニウムが使われることがありますが、これも「バン」という用語になっている一例です。
さて土壌学では、かつて土中のアルミニウムとケイ酸の含有比率を重要視して、ケイバン比というものがありました。これは土壌中のケイ酸とアルミニウムの全量を分析して、その比率から求める値です。その後、その意味があまり土壌改良に必要ないとされて、最近はほとんど論じられなくなりました。ケイ酸とアルミニウムの全量は土壌の性質を示す指標ですが、作物の根に直接影響するものではありません。
酸性になると溶出する土中のアルミニウム
作物の根に直接影響するのは、活性化したアルミニウムです。もっとわかりやすくいうとプラスの電気をもったアルミニウムイオンとなって、土壌コロイドに吸着したものと、その一部が水溶性になったものです。
ここでケイ酸とアルミニウム、そして鉄の溶解について明確にしておきます。ケイ酸はアルカリ側で溶けて、鉄とアルミニウムは酸性側で溶けます。実はこれは大変重要なことです。土が酸性側に傾くことでアルミニウムが溶け出してくるということは、作物根にとって有害な物質が土から出てくることなのです。溶けだしたアルミニウムはアルミニウムイオンの形で存在します。これは水耕栽培で試してみると、わずか2~3ppmでも有害性を示します。
会員の方はここからログイン

関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
