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圃場を説明して貰いながら、つくづく感心してしまうのは、矢端さんの作業の合理性や効率性についてのこだわりの強さだ。結果的に効率的でなかったとしても、常に効率を考えいなければ経営ではないという。だから食味にこだわっても、あくまでコストと相談した話だ。
5月に麦を刈ったあとはロータリー耕を極力少なくしてプラウを使う。二毛作地帯なので時間が限られており、効率アップの意味が大きい。秋はプラソイラを通してバーチカルハローで締めたら、もう麦を播く。6連の水田用リバーシブルプラウは、深さ18に決めている、それ以上深くすると田植機が沈むからだ。水田用プラウのメリットは3つある。まず砕土が早い。それから燃料を食わない。そして最後に麦幹処理として麦の根を鋤き込み、定植しやすくしてくれることだ。
なぜそこまでして、農業にこだわるのか?
矢端さんの説明は常に論理的だ。なぜその作物を作っているのかという経営的な位置づけもはっきりしている。保守的ではなく、新しいことに意欲的に取り組む攻めの展開で、多角経営化を進めてきたのだろう。使える補助金は地域の人々と一緒に貰い、減価償却費を減らしている。だからといって、うまく立ち回っているという感じもしない。養豚場は仲間を集めて35年前に建てたものだが、彼らが勤めをするために去っても、矢端さんは自分で溶接を覚えて修理しながら続けている。
特別に、農業が好きでたまらないという感じはしない。算盤は弾くが「ただお金のために農業をしています」という割り切りとも違う。まして、なにかの社会正義を振り回すわけでもない。では、なぜそこまでして農業にこだわるのだろうか。兼業しながら「年4回のボーナス」をもらう手もあったのではないか。
育苗ハウスでキャベツ苗に灌水している矢端さんに、そんな不躾な疑問を投げかけてみた。しばらく沈黙した後、一気に言葉が出てきた。
「学校の先生なんて簡単だよな、こんなん誰だってできらぁと思った。じゃあ学校の先生なんてならねぇ。農業で食っていくのは、皆ができねぇって言ってんだから、それをやったほうがカッコいいと思った」
なぜそこまでして、皆ができないという農業に執着するのだろうか、もう一度質問を重ねてみた。
「コメと麦を、普通に作っていたって何haやっても儲からない。大切なのは今ある面積を、どうもっと効率のいい農産物に変えていくかだ。規模拡大は相手サマのあることで、できないこともある。むしろ現状の規模でもっと儲かることもできるだろうと思ってね」
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矢端幹男 ヤバタミキオ
(有)ヤバタファーム
代表取締役
1959年、群馬県前橋市生まれ。東京農業大学を卒業後、高知県での研修を経て青年海外協力隊に参加、2年6カ月間マレーシアに農業改良普及員として赴任する。1984年に帰国して実家で就農。2003年に農業生産法人(有)ヤバタファームとして法人化して代表取締役に就任する。現在の経営概況は、水稲12.6ha、麦18.5ha、キャベツ1.3haのほか、黒豚を母豚30頭、加工品として餅を約60俵分を製造販売する。
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