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●刺激的なライバルと出会い多様なプレゼンスタイルを知る
(株)農業総合研究所(和歌山県和歌山市)及川 智正氏(36)
A-1グランプリ2009でプレゼンテーションのトップバッターを務め、饒舌かつ熱意みなぎる演説で会場を沸かせた(株)農業総合研究所の及川智正氏。発表したビジネスプランは「農業経営者なら誰でも出荷可能なインショップ方式直売所を東京に開設する」というもので、見事にJAICシードキャピタル賞を受賞した。いかにも“プレゼン慣れ”した役者ぶりに、起業家には話術の才能も問われることを感じた参加者は多かったことだろう。だが当の及川氏本人は、決してトークが得意なわけではないとか。
「たしかに講演の仕事をいただいているくらいだから、周囲からはトーク好きだと思われている。しかし、もともとはひきこもりがちの性格。ゼロから会社を立ち上げて、無収入からスタートしただけに、是が非でも提案力を磨かなければならない状況にあった。自己表現のスキルは努力で向上させることができる」
そんな背景から生まれた及川氏のトークの中でも、制限時間の約半分を占めたのが自己紹介だった。
「自分の場合、どこのプレゼンの場でもそうだが、なぜこのビジネスを始めて、この提案をしているのかということを明確にしない限り、話を聞いてもらえないと思っている。まずは自分が何者であるかをはっきりさせた上で、だからこれをやりたいのだと伝えることが大切」
これまで数々のプレゼンテーションを経験し、実はA-1グランプリ以外でも「百戦百勝」だと自負する同氏。ではA-1グランプリに出場したことで、改めて得たものは何だったのだろうか?
「それはやはり、自分以外の出場者に出会えたこと。事業の形態は違っても、農業に関しては誰よりも熱くありたい自分にとっては、みんなライバルでもある。奨励賞を受賞したふじさん牧場(山梨県)の藤田太一氏には刺激を受けた。彼は自分と同い年だが、自分とまったく違うタイプのプレゼンを行なって周囲を魅了していた。自分はイケイケドンドンの勢いで自己主張するタイプだが、藤田氏は静かな口調でたんたんと理論的に話すタイプ。どちらがいいというわけではなく、自らの素地素養を相対的に理解した上で、それを上手に活かすことが大切だと知った。それに今の自分のやり方は30代だから通用しているが、40代になったらわからない。いつまでも新人のやり方ではいけない時もくると思う」
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