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土門「辛」聞

作況指数の裏側から読み取る米価高騰のシナリオ

 「福井県農協中央会は『従来から福井統計情報事務所の調査方法に疑問を持っていた。10月15日時点の福井県の作況指数89は高すぎる。実際の指数は10ポイント下回る』などと修正を求めていた。数字を調整できないはずの作況指数に修正を求めていたということはどういうことなのか」(98年8月7日付け)。

 農水省は「統計に間違いなどあり得ない」と一笑に付したものの、生産量を過大に見積もったボロはすぐに出てきた。春の時点で食べ尽くすはずの国産米が端境期直前の6月にわき出てきたのである。おかげで1俵5万円、6万円もした市中米価はストンと暴落してしまったこともあった。その記事はズバリ指摘する。

 「関係者から『県レベルの作況指数の決定には都道府県の農業委員会や農業試験場、農協代表などの意見を取り入れるため、調査結果から1、2ポイント動くことはある』との証言を得た。一部の農家からは『大抵の場合、作況指数による予想収穫量よりも実際の収穫量の方が多い』との本音の声も聞いた」

 福井県農協中央会とAさんの指摘で妙に符合するのは、作況指数と実際の生産量の乖離が10%違うという点である。坪刈はコメを選別するふるい目を1・7mmでふるうことになっている。福島県の場合、会津地区は1・85mm、中通りと浜通りの両地区は1・80mm。こうしたことから坪刈は実際の生産量より多くなる傾向があるが、それを考慮しても10%も違うようなことには絶対にあり得ない。やはり実際の調査数字をベースに「補正」と称した「改ざん」があるとみるのが正解かもしれない。

 結論を急ごう。20年産の作柄はどうみても不作傾向が強い。主たる要因は全国的な不順な気象ではなかろうか。東北は完全に冷害の傾向が出ている。田植期に高温と強風で苗がダメージを受け、分けつ期になってもそれを引き継いでいるというレポートもある。新潟は、中越がまずまずでも、魚沼、佐渡、下越が不作気味。北海道で心配なのは6月になって東風と北風が吹く日が多くなってきたという。関東の主産地も生育が6日前後遅れている。

 現時点で作況指数を予測することは少々乱暴なきらいはあるが、昨年の99を下回ることは確実とみた。各地のレポートを参考にすると、現時点で農水省公表の数字は96か97か。台風被害でも受ければ95以下になることも大いにあり得る。仮に96とすれば実態ベースでは90を割る数字になろうか。数量ベースでは70万t程度が不足することになる。

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