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【編集長インタビュー】
政策で農業が変わるだろうか? いや、それは幻想でしかない
- NPO法人 日本プロ農業総合支援機構(J‐PAO) 副理事長 髙木勇樹
- 第75回 2010年10月29日
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なぜ農地制度改革は頓挫したのか
昆吉則(本誌編集長) 10月3日にNHKで放送された「なぜ希望は消えた?~あるコメ農家と霞が関の半世紀」を興味深く拝見しました。髙木さんは農水省在職中、農地制度改革に取り組んでいたことは読者の方もご存知かと思いますが、あらためて経緯をお聞きします。
髙木勇樹(J‐PAO副理事長) 1991年、私が企画室長を務めていた時、耕作放棄地が20万haも出ていて、誰が見てもおかしい状況でした。それで農地制度は破綻しているのだから、利用に軸足をおいた抜本見直しをすべきだと私から言い出したんです。
昆 当時、株式会社の農地所有は一番のタブーでした。
高木 同年末に議論を始めたのですが、翌年の1月4日の日経に記事が出たんです。「これは危険だ。絶対にやらせない」と考えた誰かが情報を流したんでしょう。それで一気に反対の声が上がって、法案化はおろか議論もできなくなってしまいました。当然、私は抵抗はしましたが、結局はトップが判断するため、従わざるを得なかったんです。2001年に農業生産法人に株式会社の経営形態を認める等を内容とする農地法は改正されましたが、それでもなお根本的な解決には至っていません。「所有ではなく利用に軸足をおくべき」が私の思いでしたから、この時は無念でした。
昆 「農地制度はこのままでいい」と主張していた官僚や学者グループは、今どう感じているんでしょうね。
髙木 NHKの番組を通して彼らの意見を聞きたかったのですが、みんな出演を断ってきたそうです。現実がなぜこうなったのか、これからはどうするべきなのかを語るのがせめてもの責任だと思いますが、逃げて沈黙してしまう。農政というのは専門的な部分が多いから、仲間が内輪でまとまりやすいんですよ。既得権を守られてる人から支持を受け、お金をもらい、中だけの議論をして、そこに政治も巻き込まれていく。
昆 ある試験場に勤める先生は「自給率批判は共感できるが、自分の立場でそれを言うことはできない」と言ってました。今のような農業改革が叫ばれる場面ですら、農業関係者の居場所作りのために農業問題が創作されているんです。
髙木 おっしゃる通りです。農地制度改革が頓挫したのは、その象徴的な出来事だったと思います。
昆 前例主義を是とする官僚機構の中にありながら、変えなければいけないとお思いになった理由は?
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髙木勇樹 タカギユウキ
NPO法人 日本プロ農業総合支援機構(J‐PAO)
副理事長
1943年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業後、66年農林省(当時)入省。畜産局長、大臣官房長、食糧庁長官などを経て98年農林水産事務次官就任。2001年退官後、農林中金総合研究所理事長、農林漁業金融公庫(当時)総裁などを務めた。2007年日本プロ農業総合支援機構を組織し、副理事長に就任。経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会委員も務めた。http://www.j-pao.org/
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