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【土門「辛」聞】
危機感、緊張感ゼロ。農水省 肥料行政担当者の無責任ぶり
- 土門剛
- 第76回 2010年10月29日
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2年前の秋、筆者は、当時の石破茂農水大臣の招きにより、農林水産省改革チーム「有識者との意見交換会」に出席したが、その折、農水省の肥料行政に次のような注文をつけておいた。
「肥料に関しても、農林水産省は今年500億円にもなる肥料高騰対策を実施しているが、まさにバラマキである。世界の肥料を巡る状況を見ると、肥料調達のために全農や三菱商事がヨルダンの現地企業と合弁で設立した『日本ヨルダン肥料』という会社があるが、合弁の相手である国有企業が最近民営化され、日本の肥料調達に影響を与える懸念がある。こうした重要な情報も当初農林水産省の担当者は把握していなかった。今、国に求められていることは、税金をばらまくような対策ではなく、例えば肥料調達のためのシンジゲート(企業連合)を設立すること、新たな鉱山開発に利子補給すること、肥料原料の輸出国と外交交渉で有利な調達を目指すことなど、これらが本当の意味での政策である。若手はこういう政策をやりたいと思って官僚を目指すのだ」(農水省ホームページ)
この意見交換会は、ご記憶かと思うが、事故米処理で国民から厳しい批判を受けた農水省が、組織再建のため石破大臣の指示で開いたものである。筆者は、本誌2008年7月号で「世界で急騰するリンとカリ ニッポン農業の肥料はどうなる?」という記事を発表。その中で、わが国のお粗末な肥料原料調達事情について厳しく批判を加えておいたが、農水省で本問題を扱う農業環境対策課長は何ら反応を示さなかった。その危機感の欠如にあきれ返っていたところ、そのような機会があり、これは日頃の考えを披瀝する絶好の機会と思い、上記のような意見を大臣の目の前で開陳したのである。
誰のための何のための輸入原料調査事業
筆者の指摘に対し、石破大臣は迅速に動いてくれた。生産局長に対し、本問題について省を挙げて取り組むよう指示したのだ。これに伴い、「肥料原料安定確保戦略会議」が発足し、肥料及び肥料原料をめぐる国内外の情勢について把握、さらに肥料原料安定確保に向けた対応方策について検討することになったのである。
会議には、外務、経済産業の関係各省に、全農肥料農薬部部長、肥料輸出入協議会事務局長、日本肥料アンモニア協会事務局長ら民間のメンバーも加わって、2回の検討会を開催した。その検討結果は、今年2月に「肥料原料の安定確保に関する論点整理」という形で公表された。ポイントは、次の部分である。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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