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松尾 聞いておりませんでした。
筆者 そういうことはきちんと聞いておいて、彼らが説明した話の裏を読み取り、大臣以下、政務三役に逐一報告しておくことではないか。ヨルダンの件でも懲りたはずだろ。
松尾 …………。
愚かな農水課長どもにつける薬は何もない
ヨルダンの件とは、前掲の記事で取り上げた全農と三菱商事などが設立した日本ヨルダン肥料(以下、NJFC)の大失敗のことである。日本とヨルダンが共同で設立した会社で、日本側の出資分は60%。うち全農が30%、残りが三菱商事などの出資である。当初、ヨルダン側は国営のヨルダン燐鉱公社(以下、JPMC)がパートナーだったが、同国政府の方針でJPMCが民営化され、06年、アブダビの政府系投資ファンドに身売りされ、それ以降、NJFCへ優先供給していた原料が中国へ回されたという。
全農と三菱商事は、そのことを農水省にも報告せずにひた隠しにしていた。お粗末なことに、農業環境対策課がこの事実を知ることになったのは、JPMCの身売りが起きてから2年も経過してからのことである。09年秋に、当時の別所課長に、「君は、いつJPMCの身売りを知ったか」と質問したことがある。別所課長が言いよどんでいるので、「(同年)7月ではないか」と追及したら、渋々認めてきた。
7月というのは、JPMCの身売りによる原料入手難でNJFCの経営が大混乱していた時である。自民党農政族だった谷津義男・前代議士らが、原料確保についての善後策を協議するため、急遽、ヨルダンを訪問することになり、政府に公用旅券の発給と現地での便宜供与を求めてきて、発覚したのだ。
彼らの間抜けぶりは、その前年の10月9日に開催された「第6回食料供給コスト縮減検証委員会」のやりとりで見事に証明される。タイトルの通り、肥料、農薬、農業機械など農業資材全般についてコスト見直しをかけるものだ。この委員会が開かれたタイミングというのが、JPMCが身売りされ、全農や三菱商事がヨルダンで原料調達に絶望的な状況にあった時期である。主催したのは、総合食料局食料企画課の梶島達也課長(現・総合食料局総務課長)だった。この時の議事録は、なぜか農水省ホームページから削除されているが、筆者の手許にある議事録によれば、当時の生産技術課長がこんな真抜けた答弁をしている。
「肥料につきましても、高度化成におけるヨルダン肥料の割合は化学肥料全体の5.1%に過ぎませんので、この後、これを全体にどういうふうに広げていくのか」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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