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過剰の対策、欠乏の克服

水田の土を確かめる技



水田落水期に下層土を観察する

 まず、水田にも種類があるということを理解してください。「何だそれ」と思うでしょう。これは凡用性を語るうえで、大変に重要なことです。水田の種類とは、すなわち水田の特徴の違いで、その違いの原因はズバリ最低水位が決めているものです。では最低水位とは何かというと、それは落水の状態です。

 秋の収穫が終わって10月半ばを過ぎると、降雨量も減って田が乾いてきます。この時期を「落水期」と呼びます。落水期は、西南暖地では10月中旬~翌年の2月中旬ぐらいまでです。積雪する北陸や東北地方では10月中旬から落水期に入ります。ただし積雪による融水の影響があるので、11月下旬ぐらいまでの間が水田落水期の土壌調査をする適期になります。

 水田落水期に確認するのは下層土の状態です。水田の性質を知るために最も重要なのは、人が耕している表土ではなく下層土です。ここに情報がつまっているのです。その理由は下層土をみれば地下水の上下変化や、水田土層内の水の縦移動の様子が、鉄とマンガンの反応によってわかるからです。まず、説明がわかりやすく、現場でも観察しやすい鉄の動きをみてみましょう。


下層土の斑鉄で地下水の上下変化を知る

 鉄は酸素のあるところでは酸素と結びついて、錆び色(赤褐色)をした酸化鉄になります。この酸化鉄を酸素のないところ、というより酸素を奪いとるような状態のところにおくと、青緑色をした還元鉄に変わります。両者の違いは色だけではありません。還元鉄は、水に溶けて移動します。これに対して酸化鉄は、水に溶けないで土の粒子に付着して拡大します。

 春先の田起こしも終り、5月には代かきをして田植えに進みます。湛水、つまり田に水を張ると、水田の作土は酸素の少ない状態になって、鉄は還元状態に傾くようになります。先述のように還元鉄は水に溶けて移動しますが、その移動は上から下への方向です。こうして鉄は作土層(表土)から下層土に移動します。

 下層土には、水田特有の土の粒子が硬く圧迫されて緻密な状態になった「スキ床」があるため、ここで還元鉄が集積することになります。集積した還元鉄が秋になって落水期になると、酸素にふれて酸化鉄となります。これは水に溶けないので、この場所が錆び色になります。その色を私達が観察するのです。

 これがあると、土の断面が錆び色の斑状になるので「斑鉄」と呼んでいます。この斑鉄が土壌断面にできる理由は、簡単にいうと酸素があるからです。しかし、斑鉄が観察できたことと、稲の作付期間中に充分酸素が根に供給されていることと同じ意味かというと、それはイエスともノーともいいかねることも覚えていてください。

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