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【視点】
日本人だからこそ、価値がある
- 東京すしアカデミー 代表兼校長 福江誠
- 第79回 2010年12月08日
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持ち帰りや回転寿司など、寿司の業態が広がって大衆化したため、近年、職人以外の人が寿司を握る機会が増えている。そこで徒弟制ではなく、短期間で効率的に技術を身につける場として、東京すしアカデミーを設立した。開校から数年経つと、インターネットで当校を知った外国人が受講するようになり、今までで30カ国の人が卒業している。日本人を含む卒業生の8割以上は、海外での勤務を志向している。
というのも2000年以降、ヘルシーなイメージが受け入れられ、今は世界的な寿司ブームだ。富裕層には完全に定着している。中でもユダヤ人や華僑のビジネスマンにはカウンターで食べる寿司が好まれている。彼らは調理や盛り付けをパフォーマンスとして評価しており、ユダヤ人は戒律上、目の前で食材が調理されると安心できるため、高いお金を払うことを厭わない。富裕層に行き渡った結果、最近では人気が庶民層にも広がっている。現地の人が見よう見まねで作っても、寿司店を開店すれば、その日から客が入り儲かる状況だ。しかし市場の拡大が急速なあまり寿司職人が足りていないため、就職・給与面で圧倒的に優位だと、外国人がわざわざ日本まで受講しに来ているのだ。
日本人に求められるもの
とはいえ、海外で本当に求められているのは日本人の寿司職人だ。他国の料理人の技術はまだ一定のレベルに達しておらず、食べれば日本の寿司との味の差は歴然としている。また、世界的に見れば生食調理は独特かつ繊細なため、日本食のノウハウや食材を学びたがっているシェフも多い。
ただし日本人には技術だけでなく、マネジメント能力とコミュニケーション能力も求められる。用意されるポジションは基本的にマネージャーだが、現地の人間を使いこなしながら、寿司の技術を伝授できることが前提だ。現地の言語でマネジメントができてこそ高い給料で雇われるのだ。
人の派遣だけで終わらせない
こうした状況で、日本の農家ができることもある。例えば、有名なフレンチシェフが柚子を使い始めると、ほかのシェフも柚子を使い出すというような風潮がある。食材のメディアであるレストランや寿司店を利用すれば、そういった流れは簡単に作れる。コメについても同じことが言えるだろう。それには食材の良さを伝えるための実演販売のような方法をケアできるコーディネーターも必要だ。
海外市場にただ人を派遣するだけではもったいない。日本人だからこそ価値のある技術を中心に、学校、資格、ブランドライセンスなど、全体をセットとして今後は売り込んでいきたいと思う。(まとめ・鈴木工)
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福江誠 フクエマコト
東京すしアカデミー
代表兼校長
1967年富山県生まれ。90年金沢大学法学部卒業後、大手会計システム会社に入社する。転職したコンサルタント会社で寿司ビジネスに携わり、2000年、経営コンサルタント事務所を独立開業。02年、東京すしアカデミーを開校し、現職に至る。著書に『日本人が知らない世界のすし』(日本経済新聞出版社) http://www.sushiacademy.co.jp/
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