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【土門「辛」聞】
TPP参加で避けて通れぬ「日本農業」構造政策
- 土門剛
- 第77回 2010年12月08日
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突如降って沸いた環太平洋戦略的経済連携協定(以下、TPP)の参加問題。この問題を我々プロ農業者はどう考えればよいのか。筆者なりに考えてみた。
TPPって何のこと?
質問 TPP、EPA、FTA、WTO、貿易交渉がいくつもあって混乱しているが。
土門 ここは整理しておく必要があるね。お馴染みは世界貿易機関(以下、WTO)だろう。ここを舞台に1995年から貿易自由化に向けての交渉を繰り返してきたものの、加盟各国(現在153カ国)の意見がうまく調整できず、15年も経つのに、交渉はまとまっていない。
そこで交渉相手の数を絞って、主に二カ国・地域間で話し合えば交渉がまとまりやすいということで、自由貿易協定(以下、FTA)を結ぶという取り組みが90年後半から各国によって始められた。それをさらに市場開放の対象を拡げる意味で取り組み始めたのが、経済連携協定(以下、EPA)と呼ぶ交渉スタイルだ。
EPAは、関税撤廃などの通商上の障壁を除去するだけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、及び、サービス・投資・電子商取引等のさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進などを目指している。
いずれも関税撤廃など通商上の障害を除去することが交渉の目的となっているが、EPAはFTAのバージョンアップ版という位置づけでもある。そのFTAなりEPAの考え方をベースに、太平洋をグルッと取り囲む諸国を対象にしたものが、大騒動になっているTPPと呼ぶ市場開放を目指す交渉だ。
TPPをもっと拡大させた究極の市場開放のようなものが、単一市場(シングル・マーケット)を実現した欧州連合(以下、EU)ではないかと考える。
質問 市場開放問題は、その世界経済の大きな流れの中で考える必要があるのか。
土門 TPPの問題を考える時に必要なことは、日本農業を狭い範囲で考えるのではなく、もっとグローバルな視点から将来の方向を見据えていくということだ。
EUも、加盟国の中には農業で競争力のない国も含まれているのに、生産者に所得補償を講じるということで競争条件をフラットにして単一市場を実現してきた。その前提に、加盟各国の間で市場を拡げた方が絶対にプラスになるというコンセンサスがあったからだ。
単一市場が誕生して10数年経過したが、市場を広げたことによるデメリットよりもメリットの方が多いという評価が定着してきている。
質問 ところで日本のEPAやFTAの取り組み状況は。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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